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退職した社員が情報を持ち出した疑い|顧客情報・技術情報の流出を調べ、証拠を固め、損害を止めるまで

読了目安 約21分実務は主任調査員監修/法律部分は弁護士監修公開 2026.08.06

退職の挨拶から二か月、主要顧客が、立て続けに離れていく

最初は、ただの偶然に見えました。十年以上つきあいのあった得意先から、「今期で取引を見直したい」という連絡。担当が変わったばかりだから、そういうこともある。そう自分に言い聞かせた矢先、別の主要顧客からも、ほとんど同じ時期に、同じような話が届く。

そして、三件目。決め手は、価格でも品質でもなく——「今度お世話になるところに、御社を長く担当していた方がいらっしゃって」という、何気ない一言でした。

その瞬間、バラバラだった点が、一本の線でつながります。二か月前に「円満に」辞めていった、あの社員。競合に移ったらしい、という噂は耳に入っていた。でも、まさか。あの人が、うちの顧客リストを、見積もりの履歴を、単価の内訳を——まるごと持って出たのではないか。

思い返せば、退職前の一か月、あの人はやけに残業が多かった。私物のUSBを、机の上でよく見かけた。共有フォルダに、深夜のアクセス記録が残っていた気もする。あのとき気に留めなかった小さな違和感が、いま、順番に意味を持ちはじめます。

胸の中で渦巻いているのは、怒りだけではありません。このまま指をくわえていたら、うちの会社は静かに削られていくという、冷たい焦り。かといって、証拠もないまま相手に電話をかければ、こちらが「言いがかりだ」と切り返される。何をどう確かめ、どう動けばいいのか——その順番がわからないまま、時間だけが過ぎていきます。

この記事は、まさにその宙ぶらりんの中にいるあなたのための、退職者による顧客情報・技術情報の持ち出しに特化した実践ガイドです。「疑い」を「確かめられた事実」に変え、損害を食い止め、法的に止めるところまで、順番に整理します。長いので、気になるところから読み返してください。

派手な話はありません。情報持ち出しへの対応は、感情ではなく手順の問題です。落ち着いて読み進めてください。全体像を先につかみたいなら、企業向け調査の入口をまとめた 企業調査とは もあわせてどうぞ。

なぜ退職者の情報持ち出しは、起きやすく、厄介なのか

「うちの社員に限って」と思いたい。その気持ちは自然です。けれど、退職者による情報の持ち出しは、環境そのものに起きやすい条件が重なっている——これは、法人対応の現場で繰り返し目にする事実です。

ひとつは、在職中は「正規のアクセス権」を持っていたという構造です。顧客リストも、図面も、見積もりデータも、業務のために日常的に触れていた。だから、持ち出しは「侵入」ではなく「日常業務の延長」として起きます。外から鍵をこじ開けるのではなく、内側から静かに持って出る。ここが、外部からのハッキングとまったく違う難しさです。

ふたつめは、退職の前後という「監視の空白」です。引き継ぎでバタバタし、送別の空気もあって、誰もが少しだけ気を緩める。その時期こそ、まとめてデータを抜くには都合がいい。退職前の一か月に不自然な残業やアクセスが集中していた、というのは、後から振り返ると珍しくないパターンです。

みっつめは、「自分が育てた顧客だ」という当人の理屈。長く担当した相手ほど、本人の中で「会社のものか、自分のものか」の線が曖昧になります。競合への転職や独立をきっかけに、その曖昧さが「持って行って当然」という自己正当化に変わる。悪気の有無にかかわらず、結果として会社の資産が流出する。

そして最大の厄介さは、被害が見えにくく、じわじわ効くことにあります。現金の横領なら、帳簿の穴で気づけます。けれど情報の持ち出しは、盗まれても手元のデータは減りません。気づくのは、たいてい顧客が離れはじめてから。損失が表面化したときには、すでに流出から時間が経っている。だからこそ、「おかしい」と感じた今この瞬間が、動きはじめる分かれ目になります。社内不正全般の考え方は 社内不正・横領は自社で調べられる? にも整理しています。

実際に多い、「持ち出しの手口」の類型

ひとくちに情報持ち出しといっても、中身はさまざまです。自社で起きている(かもしれない)ことが、どの型に近いのかを知っておくと、確かめるべき事実の見当がつきます。相談の現場で多いのは、次のような型です。

① 物理的に、そのまま持ち出す。 USBメモリや外付けドライブへのコピー、私用スマホでの画面撮影、書類の印刷・持ち帰り。もっとも古典的で、もっとも多い。退職直前の印刷枚数や、私物メディアの持ち込みが、後から手がかりになります。

② 自分宛て・私用アカウントへ送る。 業務ファイルを個人のフリーメールに添付して送信する、私用のクラウドストレージへアップロードする。「家でも作業するため」という口実が立ちやすく、本人の中で罪の意識が薄いことも多い型です。

③ クラウド・共有フォルダから、退職間際にまとめて抜く。 普段は触らない範囲まで含めて、深夜や休日にアクセスし、一括でダウンロードする。アクセスログの「時間帯」と「範囲」に、平常時とのズレが出ます。

④ 顧客との「関係ごと」持って行く。 データそのものより、顧客の担当者名・決裁者・過去の値引き経緯・クレーム履歴といった、頭の中と手元のメモに入った情報を使って、転職先で同じ顧客に営業をかける。ファイルの持ち出し以上に、実害が直接的に出る型です。

⑤ 技術情報・ノウハウの流出。 設計データ、図面、レシピ、製造条件、独自の業務マニュアル。これらは一件でも競合の手に渡れば、長年の優位が一気に崩れかねません。金銭被害が見えにくいぶん、長い目で見た損失は最大級になりがちです。

⑥ 在職中からの、内通・二重活動。 退職後ではなく、辞める前から競合と接触し、情報を渡していたケース。副業・競業の禁止に反していないか、という論点とも重なります。→ 従業員の副業・競業は就業規則違反で問えるか?

これらの型は、しばしば組み合わさって起きます。①でデータを抜き、④で顧客に営業をかけ、⑤で技術も渡す——という具合に。だからこそ、最初に「何が、どの経路で、どこへ流れた疑いがあるか」を言葉にしておくことが、後の調査の精度を左右します。

まず、いちばん大事な話——先に証拠、あとで対処

細かい手順に入る前に、この記事でいちばん伝えたい結論をお伝えします。

情報持ち出しへの対応で、順番を守るだけで、結果は大きく変わります。守るべき順番は——

疑いの段階では騒がず、客観的な証拠で「持ち出しの事実」を固めてから、対処に動く。 これに尽きます。

大切なポイントは、3つ。

  • 先に相手を問い詰めると、証拠は永遠に遠ざかる。 本人に電話をかけた、内容証明をちらつかせた、それだけで相手は身構えます。私用端末のデータは消され、口裏は合わされ、「そんな事実はない」の一点張りになる。動いた瞬間に、いちばん欲しかった事実が手の届かない場所へ行きます。
  • 社内の人間が慌てて集めた記録は、いざというとき弱い。 「利害のある側が、都合よく作ったもの」と見られがちだからです。第三者が中立の立場でまとめた記録のほうが、社内でも法的手続きでも、材料として通用します。
  • 調べ方を誤れば、今度はあなたの会社が責任を負う。 元社員の私用スマホを勝手に覗く、無断でGPSを付ける——行き過ぎた手段で得た情報は、証拠として使えないばかりか、実施した側が問われます。

「一刻も早く止めたい」。その焦りは、正しい。けれど、そこをぐっとこらえて静かに事実を固める。これが、後戻りしないための最初の一歩になります。急いで動くことと、正しく動くことは、別物なんです。

良かれと思って、やってはいけない自社調査の失敗

疑いを持った経営者が、我慢できずに、あるいは良かれと思って踏み込んでしまう手があります。そのほとんどが、事態を悪化させます。ここは、はっきり書きます。

① 本人に、直接連絡して問い詰める。 いちばん多い失敗です。「はっきりさせたい」一心で、確たる証拠がないまま元社員に電話をかける。相手は否認し、警戒し、手元の証拠を消し、転職先とも口裏を合わせる。一度警戒された相手から証拠を取り直すのは、最初から取るより何倍も大変です。

② 転職先の会社に、いきなり抗議する。 相手企業に「うちの情報を使っているだろう」と乗り込むのも、同じ理由で危険です。証拠がなければ「言いがかり」で終わり、こちらの手の内だけが伝わる。最悪の場合、名誉毀損だと逆に主張される余地まで残します。

③ 元社員の私用スマホ・私用アカウントを、覗こうとする。 退職後の私物端末や個人アカウントへの不正なアクセスは、法に触れるおそれがあります。そこで見つけたものは証拠として使いにくく、見た形跡から相手を警戒させるだけ。

④ 無断で、GPSや尾行のまねごとをする。 他人の車や所有物への無断のGPS取り付けは、状況により法に触れます。素人の尾行も、まず見失いますし、気づかれれば読めていた行動パターンごと消えてしまう。

⑤ 社内で、疑いを口にして回る。 「あいつが持ち出したらしい」と、たとえ信頼する幹部相手でも漏らせば、噂は思った以上の速さで広がります。残っている社員の動揺を招き、めぐりめぐって当人の耳に入れば、①と同じ結果になる。

この5つに共通するのは、「あなたが動いたことが相手に伝わると、証拠が消える」という一点です。従業員のプライバシーや、退職者の権利に配慮を欠いた調べ方で得た情報は、いざというとき使えないばかりか、会社側の責任問題になりかねない。「事実さえ分かればいい」ではなく、「どう調べたか」まで問われる——ここが、情報持ち出し対応の難しさです。探偵に頼めることと頼めないことの線引きは 探偵に頼めること・頼めないこと に、個人情報の扱いは 個人情報保護法と探偵調査 にまとめています。

デジタル痕跡と周辺調査で、「持ち出しの事実」を固める

では、社内で手を出せない部分を、どう埋めるのか。ここで、第三者による専門調査が選択肢になります。手の内の細部には踏み込めません——それが商売道具だからです。けれど、何が期待できるかの輪郭は、知っておいてください。

情報持ち出しの立証で鍵になるのは、大きく二つの方向です。

ひとつは、社内に残った「痕跡」を、正しく読み解くこと。 情報は、抜かれても手元から消えません。けれど、抜くという行為は、必ず何らかの記録を残します。共有サーバーやクラウドのアクセスログ、退職前のダウンロード履歴やその時間帯、外部メディア接続の記録、メール送信の履歴、印刷枚数の推移——平常時の本人の動きと、退職前の動きを突き合わせると、「いつ・何に・どの範囲で触れたか」のズレが浮かび上がる。ここは、社内のシステム担当や、専門の調査で扱う領域です。ただし、扱い方を誤ると証拠としての価値が崩れるため、後述する「保全の順番」が効いてきます。

もうひとつは、社外に出た「事実」を、行動から確かめること。 データの痕跡だけでは、「持ち出した」とまでは言い切れても、「転職先で使っている」までは示せないことがあります。そこを埋めるのが、合法的な範囲での周辺調査です。元社員が競合の名刺で、こちらの既存顧客を訪ねている。かつての取引先と、退職後に接触を重ねている。転職先が、こちらの独自ノウハウとうり二つのサービスを、急に打ち出してきた——こうした「外に出た事実」を、公然の場での行動確認や関係先の裏取りで押さえることで、点だった痕跡が、線になります。

第三者の調査の一番の価値は、利害から切り離された立場で、事実を客観的な記録として残せることにあります。「何時に、どこで、誰と、どう動いたか」を時系列で押さえた報告書が、あなたの「そうに違いない」という思いを、事実で語れるものに変える。この報告書が、後の社内対応でも法的手続きでも、土台になります。報告書がどこまで証拠になるかは 探偵の報告書は裁判の証拠になる? を参照してください。

正直にお伝えしておくべきことも、二つあります。ひとつは、調査は成果を保証するものではないこと。相手の用心深さや状況によっては、はっきりした事実を押さえきれないこともあります。もうひとつは、信頼できる調査者は、違法な手段は使わないこと。私用端末への不正アクセスも、無断のGPSも、盗聴も、やりません。それらで得た情報は、結局あなたを守らない。「合法的に・正当な目的で・必要な範囲だけ」を守るからこそ、その記録が後で力を持ちます。

証拠保全の順番——社内で、今すぐ静かにできること

ここは、実務でいちばん差が出るところです。焦って本人に当たる前に、手元の証拠を「消えない形」で、静かに保全する。順番を意識してください。

1. まず、動きを止めて「今の状態」を保存する。 いちばんやってはいけないのは、疑いのファイルやログを自分で開いて確かめ、上書きしてしまうことです。ファイルは、開くだけで最終アクセス日時が変わります。共有フォルダやサーバーのログも、放っておけば古いものから消えていく設定になっていることがある。まず、関係しそうなログ・データの「保存期間の延長」や「バックアップの確保」を、システム担当に静かに指示する。ここが最優先です。

2. 退職前後の「記録」を、そっと集める。 本人のPCの利用記録、外部メディアの接続履歴、メール送信ログ、共有フォルダのアクセス履歴、入退室やカードの記録、印刷履歴。当人に気づかれない範囲で、日付と内容を控えていきます。この段階では、集めることに徹し、評価や結論は急がない。

3. 退職時に本人が署名した書類を、確認する。 秘密保持の誓約書、退職時の合意書、就業規則の該当条文。これらは、後で「約束があったか」を示す土台になります。手元にないなら、どこにあるかを確認しておく。

4. 顧客側の「動き」を、記録として残す。 どの顧客が、いつ、どんな理由で離れたか。「担当だった人が移った先で世話になる」といった顧客の一言も、日付とともにメモしておく。これが、持ち出しと損害を結ぶ線になります。

5. ここまで固めたら、専門家に渡す。 保全した記録を持って、探偵の相談と、弁護士の相談へ。自社で無理に「証拠」に仕上げようとしないでください。集め方を誤ると価値が崩れます。素材を保全し、仕上げは専門家に託す。この分担が、いちばん堅い。

要は、「開くな、消すな、当たるな。まず保存しろ」。この四つを守るだけで、後の選択肢が大きく広がります。

不正競争防止法・営業秘密の考え方(判断は、必ず弁護士へ)

情報持ち出しを「法的に止めたい」と考えるとき、多くの人が名前を聞くのが、不正競争防止法という法律です。ここは、知っておくべき考え方だけをお伝えします。個別のケースが法に触れるかどうか、どう請求できるかは、必ず弁護士に相談してください。 この記事では、当否を断言しません。

大まかな枠組みとして、まず押さえたいのは——会社の情報が法的に強く守られるかどうかは、その情報が「営業秘密」として扱えるだけの条件を満たしていたかが、ひとつの分かれ目になる、という点です。一般に、次の三つがそろっているかが問われると言われます。

  • 秘密として管理されていたか(アクセス制限やパスワード、「マル秘」の表示、限られた者しか触れない運用など、会社が「これは秘密だ」と分かる形で管理していたか)
  • 事業に役立つ情報か(顧客リスト、設計データ、原価や単価の情報など、実際に価値があるか)
  • 世に知られていない情報か(誰でも入手できる公知の情報ではないか)

ここで痛いのは、「誰でも自由に見られる状態で放置していた顧客リスト」は、いざというとき守りにくいという現実です。日ごろの情報管理そのものが、後の交渉力を左右する。だから、今回の一件と並行して、社内の情報管理を見直す意味は大きい。

そして、退職時に秘密保持や競業避止の誓約書があったかどうかも、対応の幅に関わります。約束があれば、それにもとづく主張がしやすくなる。なかったとしても、打つ手がないわけではありませんが、いずれにせよ「どの法律の、どの構成で攻めるか」は弁護士の領域です。損害賠償、差止め、刑事告訴——どの道が現実的かは、集まった証拠の質と、情報管理の実態しだいで変わります。探偵は事実を固める役割、弁護士は法で動かす役割。この分担を前提に進めてください。持ち出した相手に損害を負わせ、被害を回復する場面では、相手の資産や所在を確かめる調査が要ることもあります。→ 横領した社員の財産・所在調査

損害の食い止め方——流出を止め、被害を広げないために

証拠を固める動きと並行して、今すぐ被害を広げないための手も打っておきます。順番は崩さず、けれど手をこまねかない。

① 残っているアクセス権を、静かに締める。 これは退職者本人にというより、在職中の関係者に対してです。退職した人間のアカウントが生きたままになっていないか。共有権限が広すぎないか。今回を機に、誰が・どの情報に・どこまで触れられるかを見直す。ただし、疑っている当人が在職中の共犯者を持つ場合もあるため、動きが表に出ない形で進めます。

② 顧客との関係を、こちらから握り直す。 離れかけている顧客に、慌てて「持ち出しの疑い」を持ち出す必要はありません。むしろ逆効果です。やるべきは、改めて誠実に向き合い、関係をつなぎ直すこと。「担当が代わって不安をおかけしていないか」という姿勢で接点を持つほうが、実利があります。事実の追及は裏で進め、表では顧客を守る。この二枚看板でいきます。

③ 技術情報なら、模倣の有無を早めに確かめる。 図面やノウハウの流出が疑われるなら、転職先や競合が、こちらとうり二つの製品・サービスを出していないかを早めに把握する。模倣品が出回っている場合、その販売元を突き止める調査が必要になることもあります。→ 模倣品・海賊版の販売元は、削除申請より先に特定する

④ 「これ以上は渡さない」体制を、作り直す。 一件を片づけて終わり、ではありません。秘密保持誓約書の運用、退職時のデータ・権限の回収手順、アクセスログの保存期間、私用メディアの持ち込みルール。「できる環境」と「見つからないという油断」の両方を、仕組みでふさぐ。次の流出を防ぐことが、いちばんの防御です。

損害を止めることと、証拠を固めることは、両立します。片方のために片方を犠牲にしない。裏で静かに事実を固めながら、表では顧客と体制を守る——この並行が、結果的に会社を守ります。

動く前に、そろえておくチェックリスト

相談や依頼を考えるなら、次を先に整理しておくと、話が早く、調査の精度も上がります。完璧でなくて構いません。分かる範囲で書き出してみてください。

  • 辞めた社員の情報:在職期間、担当していた顧客・業務、退職の経緯、転職先や独立先(分かる範囲で)
  • 持ち出された疑いのある情報:顧客リスト、見積もり・単価、設計データ、マニュアルなど、何が流れた疑いがあるか
  • 退職前後の違和感:不自然な残業、私物メディアの持ち込み、深夜・休日のアクセス、印刷枚数の増加など、気づいた日付とともに
  • 手元にある記録:アクセスログ、送信履歴、入退室記録、印刷履歴(保全済みのもの)
  • 退職時の書類:秘密保持誓約書、競業避止の合意、就業規則の該当条文の有無
  • 顧客側の動き:どの顧客が、いつ、どんな理由で離れたか。転職先で再会したという情報
  • 情報管理の実態:そのデータは、社内でどう管理されていたか(アクセス制限・秘密表示の有無)

このリストは、そのまま「確かめる準備」の設計図になります。特に最後の「情報管理の実態」は、後で法的に動くときの土台にもなるため、正直に洗い出しておいてください。無料相談で何を聞くべきかは 探偵の無料相談で必ず聞く8つのこと にまとめています。

よくある質問

Q. 確たる証拠は何もありません。それでも相談していいですか?

むしろ、証拠がない今の段階こそ相談どきです。相談は、依頼を決めてからするものではなく、決めるために使っていただくもの。「そもそも調べられる状況なのか」「何を保全しておくべきか」を、動く前に整理できます。自分で当たって警戒される前に、順番を確認してください。

Q. 調べていることは、辞めた本人にバレませんか?

調査は、対象に気づかれないように行うのが原則です。周辺調査も、相手に悟られない前提で設計します。そして、まっとうな事務所は、依頼した事実そのものも含めて守秘を徹底します。むしろバレるリスクが高いのは、社内で慌てて調べたり、本人にいきなり連絡したりして、動きが表に出るケースです。だからこそ、静かに第三者へ託す意味があります。

Q. 顧客リストの持ち出しって、そもそも罪になるんですか?

なりうる場合もあれば、そうでない場合もあります。分かれ目のひとつが、その情報が「営業秘密」として守られる条件を満たしていたか。誰でも見られる状態で放置していたか、しっかり管理していたかで、扱いが変わります。当否の判断は、必ず弁護士に確認してください。 この記事では断言しません。探偵は、その判断の土台になる事実を固める役割を担います。

Q. 元社員の私用スマホの中身を、調べてもらえますか?

できません。他人の私物端末や個人アカウントへの無断アクセスは、法に触れるおそれがあり、信頼できる事務所は決してやりません。そうして得た情報は証拠として使えず、かえってあなたの立場を弱くします。合法的に確かめられるのは、社内に残った痕跡と、公然の場での行動や関係先の事実です。ここは誤解しないでください。

Q. 転職先の会社にも、責任を問えますか?

情報を使っている事実が固まれば、相手企業への対応が視野に入ることもあります。ただし、これはまさに法的判断の領域で、弁護士が構成を組み立てる話です。先走って抗議に行くと、証拠を固める前に手の内が伝わります。事実を固める → 弁護士と構成を決める → 動く。この順番を守ってください。

Q. 費用は、いくらかかりますか?

確かめたい範囲(デジタル痕跡の解析だけか、周辺の行動確認まで含むか)と、対象の動きの読みやすさ、必要な証拠の重さで変わります。「一律いくら」という決まった相場はありません。金額そのものは事務所ごとに異なるため、必ず見積もりで確認してください。大切なのは、望む結末から逆算して、必要な証拠の"重さ"を最初に決めること。社内で分かっている情報を先に整理して渡すと、初動が速くなり、ムダな稼働が減ります。

確かめたあと、あなたが選べる道

事実がはっきりしたとき、あなたは、どう動きたいでしょうか。大切なのは、確かめることと、これからどうするかを決めることは、別だということ。今すぐ一つに絞る必要はありません。

流出を止め、被害の回復を求めたいなら、固めた事実が、弁護士を通じた差止めや損害賠償の土台になります。相手の資産や所在を確かめる調査が要る場面もあります。

社内の再発を防ぎ、体制を立て直したいなら、今回の事実が、情報管理と就業規則を見直す具体的な根拠になります。「なんとなく不安だから」ではなく、「現にこう抜かれたから」という事実は、社内を動かす力を持ちます。

まずは、これ以上の流出だけでも止めたいなら、事実を固めながら、アクセス権の締め直しと顧客との関係の握り直しを、静かに並行して進めます。

そのどれもが、正しい望みです。まだ決められなくても、かまいません。まず事実を固め、望みは、そのあとで、あなたが選ぶ。 私たちは、あなたを問い詰める側ではなく、あなたが選んだどの道でも、会社を守る側に立ちます。

「あの社員が持って出たに違いない」——その確信を、確信のまま抱え込まないでください。まだ何も決めていない、という段階でも、状況を整理するところから始められます。相談は、決めるために使ってください。

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※本記事の冒頭の事例は、特定の実在の個人・企業とは関係のない、一般的な状況の説明です。また、本記事は一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士など専門家にご相談ください。

まずは、話を聞かせてください

「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。

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