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ロマンス詐欺の被害に遭った|相手を特定して被害を取り戻す、恋愛感情を利用された人のための完全ガイド

読了目安 約24分主任調査員(探偵実務経験者)監修/法律部分は弁護士監修公開 2026.08.09

送金の履歴を、上から順に、指でなぞっている

スマホの送金アプリを開いて、履歴を上から順に、指でなぞっていく。この日は三万円。その一週間後に十万円。年末に、まとまった額。全部、あの人が「困っている」と言ったから、力になりたくて送ったお金です。

数字だけを見れば、ただの送金記録。でも、あなたにとってその一行一行には、あの日のメッセージが貼りついている。「ありがとう、君だけが信じてくれる」「これを乗り越えたら、必ず会いに行く」「落ち着いたら、二人で暮らそう」。送るたびに、関係が一歩前に進むような気がしていた。

いま、連絡が返ってこない。既読すらつかない。あるいはアカウントごと、消えている。あなたは履歴を何度もなぞりながら、たった一つの問いのあいだで、行ったり来たりしている——私は、恋をしていたのか。それとも、最初から、騙されていたのか。

この二つの答えのあいだで宙づりになっているのが、ロマンス詐欺の被害の、いちばんつらいところです。結婚詐欺のように「結婚しよう」とはっきり言われたわけでもない。ただ、優しくて、寂しさを埋めてくれて、毎日連絡をくれる相手がいて、その人が困っていたから、支えたかった。それだけ。だから「詐欺に遭った」と自分で認めることが、何より難しい。愛だったと思いたい気持ちが、被害だと気づく目を、そっとふさいでしまう。

先に、一つだけ言わせてください。あなたは、愚かだったから騙されたのではありません。ロマンス詐欺の加害者は、人を恋に落とす手順を、台本にして、練習して、使い回しています。まっすぐ人を好きになれる人ほど、その台本にはまる。あなたが誰かを大切にしたかったこと、愛されたかったことは、責められる話ではまったくない。

この記事は、その宙づりのなかにいるあなたが、感情のまま動いて傷を広げないために——そして、「相手が本当は誰なのか」を突き止めることから、被害を取り戻す一歩を踏み出すために書きました。恋愛感情を利用された金銭被害の回復に、一点集中して、順番に、正直にお伝えします。取り戻せない現実も、隠しません。

出会いがマッチングアプリだった場合の被害全般(詐欺・既婚偽装・音信不通・脅迫)はこちらに型ごとにまとめてあり、「結婚しよう」と身元を偽られてお金を奪われた結婚詐欺はこちらに特化しています。立場が近ければ、あわせて読んでください。→ マッチングアプリの相手、本当は誰? / 結婚詐欺の相手を特定したい

読み終えたとき、「私が悪かった」から「私は狙われた被害者だ。まず相談してみてもいい」に、少しでも針が動いていれば、この記事の役目は果たせます。

ロマンス詐欺は、金の前に「愛」を仕込む

ロマンス詐欺という言葉に、あなたは今、抵抗を感じているかもしれません。「詐欺」と呼んでしまうと、あの日々まで全部が嘘だったことになる。それが、認めたくない。その気持ちは、とても自然です。

でも、この手口の本質を、あえてはっきり言います。ロマンス詐欺は、金を奪う手口であると同時に、恋愛感情そのものを道具にする手口です。ここが、投資詐欺やオレオレ詐欺と決定的に違う。ふつうの詐欺は「うまい話」で釣る。ロマンス詐欺は、その前に「愛」を仕込む。だから被害者は、金を失うだけでなく、愛したという事実まで汚された気持ちになる。傷が二重なんです。

加害者が「愛」を先に仕込むのには、はっきりした狙いがあります。

ひとつは、疑いを封じるため。人は、好きになった相手を疑うことに、強い抵抗を感じる。「この人を疑うなんて、失礼だ」「愛しているなら信じるべきだ」——その良心を、そのまま武器に変えられてしまう。金の話が出たときには、あなたはもう「疑えない自分」になっている。

ふたつめは、あなた自身を、共犯にするため。関係が深まるほど、あなたは周りに「素敵な人と付き合っている」と話しています。今さら「実は騙されていた」とは、言い出しにくい。この“引き返せなさ”を、加害者は計算に入れている。恥ずかしさが、あなたの口を閉じさせ、被害の発覚を遅らせる。

みっつめは、金額を、少しずつ、感情に乗せて引き出すため。一度に大金は求めない。「今月だけ助けて」「これを乗り越えたら会える」。愛と結びつけて、少額を繰り返す。気づいたときには、送金履歴が、画面をスクロールしても終わらないほど、伸びている。

だから、あなたが今この記事を読んでいること自体が、あなたのなかの冷静な部分が鳴らした、まっとうな警報です。「もしかして」と思ってしまう自分を、責めないでください。その違和感こそ、あなたを守ろうとしている声だ。

実際に多い、ロマンス詐欺の手口の型

自分が遭ったのがどの型なのかが見えると、次の一歩がはっきりします。ロマンス詐欺の手口は、おおむね次の型に整理できます。重なることも多い。

① 投資・暗号資産へ誘導する型(いちばん被害額が大きい)。 恋愛感情を育てたあと、「二人の将来のために、いい投資案件がある」「私が教えるから、一緒に資産を増やそう」と、専用の取引アプリや海外の取引所へ誘導する。最初は少額を「本当に儲かった」と出金させて信用させ、大きく入れさせてから、出金できなくする。画面に表示される“増えていく資産”は、最初から相手が操作している数字にすぎません。

② 会いに行く・会いに来るための費用をせびる型。 「渡航費が足りない」「空港で荷物が止められ、解放金が要る」「ビザの手続きに費用がかかる」——“もうすぐ会える”という期待を人質にして、送金を引き出す。会う直前に必ずトラブルが起きるのが、この型の特徴です。会えそうで、いつまでも会えない。

③ 緊急事態・不幸を装う型。 「事故に遭った」「親が倒れた」「仕事のトラブルで一時的に金が要る」。同情と焦りを同時に煽り、「今すぐ」で考える隙を奪う。愛する人が困っているのだから、と手が動いてしまう。

④ 貢がせ・立て替えを恋愛の延長にする型。 大口の要求ではなく、プレゼント、生活の援助、借金の肩代わりを「愛情の証」として少しずつ負担させ続ける。明確な“事件”がないぶん、被害の全体像がいちばん見えにくい。

⑤ 複数の相手に同時進行で仕掛ける型。 一人の加害者、あるいはグループが、何人もの相手に同じ台本で恋を演じ、並行して金を引き出す。この型では、あなたは加害者にとって“大勢のうちの一人”で、飛ぶ(連絡を絶つ)ことに一切ためらいがない。

そして覚えておいてほしいのは、これらの型は段階的にエスカレートすること。④の「ちょっと立て替えて」から始まり、②の「会いに行くため」で追加を出させ、最後は①の投資話で大きく抜く——加害者は、あなたの反応を見ながら、次の一手を選んでいます。「これくらいなら」と一つずつ許すと、気づいたときには、履歴が止まらないところまで来ている。

相手が使う「偽装」の中身——どこまでが、作りものだったのか

ロマンス詐欺の相手を特定するうえで、まず知っておくべきは、加害者が「本当の自分」を、何重にも隠しているという事実です。あなたが恋した「あの人」は、いくつもの層でできた、作られた人物像だったかもしれない。層ごとに、見ていきます。

顔写真は、他人のものであることが多い。 ロマンス詐欺では、実在する別人(モデル、軍人、医師など見栄えのいい人物)の写真をネットから拾って使う「なりすまし」が常套です。だから、ビデオ通話をいつも避ける。「回線が悪い」「今は顔を出せない仕事だ」と理由をつけて、顔を見せない。逆に言えば、送られてきた写真は、後で“その写真が誰のものか”をたどる手がかりにもなります。

肩書きは、孤独と将来性を演出する型に偏る。 「海外派遣中の軍人」「国際機関の医師」「石油や建設の実業家」「船で長期航海中のエンジニア」——共通するのは、“遠くにいて会えない”ことに説明がつき、かつ、お金を持っていそうという点。会えない理由と、いずれ大金が入る期待を、肩書き一つで両立させている。あまりに“ドラマみたいな設定”は、むしろ型どおりの疑い所です。

送金理由は、断れない情に寄せて作られる。 事故、拘束、税金、手数料、解放金、投資の追加証拠金。どれも「あなたを困らせたいわけじゃない」「本当に申し訳ない」という言葉とセットで来る。理由そのものより、“罪悪感を持たせて断りにくくする”構造が共通しています。

そして、「あなたが特別な存在だ」という偽装。 毎日の「おはよう」も、将来の約束も、あなただけに向けられた言葉に感じられた。でも⑤の型では、その同じ言葉が、何人にも送られている。これに気づくのはつらい。ただ——それが判明することは、「あなたが油断したのではなく、常習的・組織的に狙われた被害者だ」という区切りをつけてくれます。

どこまでが嘘だったのかを、一人で夜通し反芻していると、人は際限なく自分を責めます。真実がわからない苦しさは、時に真実そのものより人を消耗させる。だからこそ、後で述べる「特定」には、心を守る意味もあるんです。

国際ロマンス詐欺の特殊性——海外・暗号資産・“出金の壁”

ロマンス詐欺のなかでも、相手が外国人や海外在住を名乗る「国際ロマンス詐欺」には、国内の被害とは違う、独特の壁があります。ここは、正直に線を引いておきたい。期待させたまま費用を使わせるのは、誠実じゃないからです。

第一の壁は、お金が国境を越えると、追いにくくなること。海外の口座に送った資金、暗号資産で送った資金は、送られた瞬間に、いくつもの口座やウォレットへ分散・移動されます。国内の銀行振込なら次に述べる救済制度が働く余地がありますが、海外送金や暗号資産では、その枠組みが及びにくい。つまり、「取り戻す」という一点で見ると、国際案件はもっとも難しい部類に入ります。

第二の壁は、“出金の壁”です。投資誘導型で典型的に起きる。専用アプリの画面上では、資産が順調に増えている。少額なら出金もできた。だから信じて大きく入れる。ところが、まとまった額を引き出そうとした瞬間、「税金を先に払え」「保証金が要る」「アカウントが凍結されたので解除費用を」と、次々に理由をつけて、さらに払わせる。出そうとすると、もっと払わされる。これが、あなたを深みに沈める仕組みです。あの画面の数字は、最初から出金させる気のない、ただの表示だった。今、追加を求められているなら、これ以上一円も入れないでください。

第三の壁は、相手の実在と所在が、国をまたぐと極端に見えにくくなること。名乗った国にすら、本当にいるとは限らない。写真も、肩書きも、勤務先も、国境の向こうでは裏が取りにくい。

こう書くと、絶望的に聞こえるかもしれません。でも、国際案件でも、手がかりが国内に落ちていることは多い。送金を経由した“国内の受け子の口座名義”、日本語のやり取りの癖、指定してきた連絡アプリ、待ち合わせや通話の時間帯——こうした国内側の断片から、たどれる糸口が残っていることがあります。「海外だからもう無理だ」と結論を出す前に、手元の断片を一度、全部並べてみてください。

なぜ、まず「相手が本当は誰か」を突き止めるのか

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

恋愛感情を利用された金銭被害の回復には、避けて通れない入口が一つあります。それは、相手の「本当の氏名」と「実在する所在」です。理由は、気持ちの整理のためだけではありません。あらゆる正規の手続きが、そこを起点にしか始まらないからです。

考えてみてください。

  • お金を返してほしくても、相手の本名・住所がわからなければ、裁判も、支払督促も起こせません。 民事は「誰に対して起こすのか」が決まらなければ、一歩も進まない。
  • 詐欺として刑事告訴したくても、相手を特定できる手がかりがあるかどうかで、警察の動きの速さが変わる。
  • 送金先の口座を止めてもらうにも、その口座と相手をつなぐ情報が要る。

つまり、「相手が本当は誰なのか」を突き止めることは、被害回復のすべての手続きの土台なんです。逆に言えば、ここさえ固まれば、選べる道が一気に増える。相手の所在を確かな情報として突き止める工程そのものが、探偵の「所在調査」です。何ができて何ができないのか、その全体像はこちらに。→ 所在調査とは?できること・できないこと

「相手が誰かなんて、もう調べようがない」——そう思っているかもしれません。でも、あなたの手元には、思っているより多くの断片が残っている。やり取りの文面、送られてきた写真、口にしていた勤務先や地名、電話番号、指定された連絡アプリ、そして送金先の口座名義。わずかな破片を突き合わせると、人の輪郭は意外なほど浮かび上がります。名前しか残っていない状態からどこまで動けるかは、こちらが参考になります。→ 名前だけで人は探せるのか

自分で問い詰める・晒す——それが、いちばん相手を逃がす

気持ちは、痛いほどわかります。今すぐメッセージを送って「詐欺だろう」と問い詰めたい。SNSに「この人はロマンス詐欺師です」と書いて、次の誰かが騙されるのを止めたい。返せ、と直接ぶつけたい。

でも、そのどれもが、あなたの回復を遠ざけます。理由を、正直にお伝えします。

問い詰めると、相手は消えて、手がかりも消える。 「気づかれた」と悟った瞬間、加害者はアカウントを削除し、番号を捨て、口座を空にして飛ぶ。握れたはずの糸口が、あなたの一言で、一瞬にして霧散する。追跡の起点が、自分の手で消える。

晒すと、今度はあなたが訴えられかねない。 相手が詐欺師でも、確定していない段階でSNSに実名や顔写真を載せれば、名誉毀損・プライバシー侵害として、被害者だったはずのあなたが加害者にされるリスクが生じます。相手はそこを突いて反撃してくる。義憤は正しくても、手段を誤ると立場が逆転する。

直接取り立てに行けば、あなたが罪に問われる。 押しかけ・待ち伏せ・脅し文句は、それ自体が違法になりうる。まっとうな探偵は、突き止めた情報を「自分で取り立てる」ために渡すことは、決してしません。

集めた証拠は、晒すためのものではなく、警察・弁護士・裁判所という正規のルートに「渡す」ためのものです。この順番を守ることが、結局いちばん確実に、あなたを守る。証拠の正しい扱い方は、こちらに。→ 探偵調査の証拠は「晒すな、渡せ」

動く前に——証拠は、消える前に「そのまま」残す

相手の正体を突き止めるにも、警察や弁護士に相談するにも、土台は証拠です。そしてロマンス詐欺の証拠は、驚くほど早く消える。相手があなたをブロックすれば履歴ごと見えなくなり、アカウントを消されればプロフィールも写真も消える。だからこそ、気づいた「今」、問い詰めるより先に、まず保全してください。

残しておくべきものを、具体的に挙げます。

  • メッセージのやり取り全部(アプリ内・LINE・メール・SMS・通話履歴)。日付と相手の表示名がわかる形で、会話の流れごとスクリーンショットに。愛を語った言葉、金を求めた言葉は、一つ残らず。
  • 相手のプロフィール・顔写真・ボイスメッセージ・送られてきた画像。顔写真は後の身元確認で効くので、退会で消える前に最優先で。
  • お金の記録がいちばん重要。 振込明細、送金アプリの履歴、暗号資産の送金記録(送金先アドレス)、現金なら渡した日時・場所・金額のメモ。送金先の口座名義は、身元特定の最大の糸口です。ここは執念で残してください。
  • 相手が口にした情報のメモ。名乗った名前、肩書き、勤務先や所属、国や地名、家族構成、誘導された取引アプリの名前。「たぶん嘘」と思うものも全部——嘘のなかに、本物が一つ混じっている。
  • 時系列のメモ。いつ知り合い、いつ愛を語られ、いつ何を理由にいくら送り、いつ連絡が途絶えたか。記憶が新しいうちに書き出す。

保全のコツは、「一つの端末の中だけに置かない」こと。スクリーンショットは、別のクラウドやメール、外部ストレージにも複製しておく。スマホの故障や誤操作で、証拠ごと失う人が現実にいます。何が有効な証拠になり、どう残すべきかは、専門の視点で一度整理しておくと安心です。→ 探偵と個人情報の境界(証拠の扱い)

被害回復の順番——合法の道を、正しい順で

証拠を押さえたら、回復に向けて動きます。順番が命なので、その順で説明します。

1. まず、送金先の金融機関に連絡する(国内の銀行振込なら、その日のうちに)。 国内口座への振込であれば、「振り込め詐欺救済法」にもとづき、相手の口座が凍結され、残っていた分が被害回復として分配される可能性があります。ただし——相手の口座に資金が残っているうちでなければ、意味がない。加害者はすぐ引き出す。気づいた瞬間に、動いてください。海外送金・暗号資産では、この制度は及びにくいのが現実です。

2. 警察に、詐欺被害を申告する。 ロマンス詐欺は、刑法の詐欺罪にあたりうる犯罪です。被害届・告訴は早いほどいい。ただし警察は「事件性」と「証拠」がないと動きにくい面がある。だからこそ、時系列メモと証拠を整え、相手の手がかりを添えて相談するのが、動いてもらう近道です。脅しや身の危険があるなら、迷わず警察を最優先に。

3. 相手の本名・所在を特定する。 上の1・2を進めつつ、民事で取り戻すには、相手が「誰で、どこにいるか」が要る。ここで探偵の所在・身元調査が効いてくる。飛んだ相手を突き止めて正規の手続きに乗せる——この構造は、貸したお金を踏み倒された場合とよく似ています。回収へ進む流れの全体像は、こちらが参考に。→ お金を貸した相手が行方不明のとき

4. 弁護士に引き継ぐ。 相手の氏名・住所が固まれば、弁護士を通じて返還請求・損害賠償請求へ進めます。ロマンス詐欺は弁護士の守備範囲です。初回無料相談を設ける事務所も多く、まず話を聞いてもらうだけで、進むべき道がはっきりする。

ここで、つらい現実も正直に。恋愛感情につけこまれて渡したお金は、取り戻せないことも多い。特に暗号資産で送ったもの、海外の口座に送ったもの、相手が組織的なグループの場合は、資金がすぐ移動・分散され、回収は極めて難しくなる。金額や見込みは、この記事では断言しません。必ず弁護士・警察に相談してください。

それでも、なぜ特定して手続きに乗せるのか。あなたが泣き寝入りせず、まっとうな土俵に相手を引きずり出すためであり、時に次の被害者を生まないためです。あなたが残した記録が、同じ相手に狙われた別の誰かを救う手がかりになることも、現実にあります。

「取り戻せます」と近づいてくる相手——回収詐欺という二次被害

ここは、声を大にして警告させてください。ロマンス詐欺の被害者は、もう一度、狙われます。

一度騙されて、お金を失って、「取り戻せないかもしれない」と知ったところに、SNSのDMやメール、ときには電話で、こう近づいてくる相手がいる。「あなたの被害、取り戻せます」「返金の手続きを代行します」「送金先を追跡できる特別なルートがあります」。これが、回収詐欺(リカバリー詐欺)です。取り返せないと打ちひしがれた人の、藁にもすがる気持ちを、もう一度食いものにする。

見分ける目印を、はっきり挙げておきます。

  • 「必ず」「100%」「確実に取り戻せる」と断言する。 まっとうな専門家は、回収の可否を断言しません。断言する時点で、疑ってください。
  • 先に「着手金」「手数料」「保証金」を求めてくる。 取り戻す前に金を払わせるのは、回収詐欺の典型です。二度目の送金に、ならないように。
  • 向こうから、あなたを名指しで探し当てて連絡してくる。 被害者名簿が出回っている、と考えたほうがいい。SNSで「返金できます」と近づいてくる相手は、まず疑う。
  • 公的機関や有名事務所を名乗るのに、連絡先や所在があいまい。 名前を借りているだけのことがあります。

繰り返します。取り返せると知った被害者を、もう一度狙う商売が、現実に存在する。「必ず」「100%」を口にする相手には、絶対に応じないでください。正規の窓口は、警察、弁護士、そして相手の特定を担う届出済みの探偵です。悪質な業者を見分ける具体的な目印は、こちらに。→ 悪質・無届の探偵業者を見分ける

探偵の調査で、できること・できないこと

相手が正体を隠している——この壁を越えるところに、探偵の調査が入ります。何ができて、何ができないのか、正直に線を引きます。

できること。 探偵は、あなたの手元にある断片的な手がかりを起点に、合法的な手段を積み上げて、相手の輪郭に近づいていく。

  • 相手が名乗った氏名・電話番号・SNS・送られてきた顔写真・口にしていた勤務先や地名・送金先の口座名義——こうした断片を照らし合わせ、実在する人物か、素性は本当かを検証する。
  • 相手の所在(住所・生活の拠点)を、聞き込みや現地確認の技術で突き止める。国内に受け子や協力者がいる場合、その国内側の接点をたどる。
  • 集めた情報を、弁護士や裁判所の手続きにそのまま渡せる報告書の形にまとめる。

わずかな手がかりしかない状態でも、複数を突き合わせることで、思いがけず人物像が浮かび上がる。「これだけしかわからない」という段階でも、相談する価値は十分にあります。出会いがネット・SNSだった場合の特定の考え方は、こちらにも。→ ネット・SNSで知り合った相手の特定

できないこと(ここも正直に)。

  • 国境の向こうにいる相手を、必ず特定できるという保証。 国際ロマンス詐欺は、相手が海外にいて、資金も国外へ抜けている場合、特定も回収も極めて難しい。国内に手がかりが残っているかどうかで、動ける幅が大きく変わります。「海外の相手でも100%突き止めます」と断言する事務所こそ、疑ってください。
  • 戸籍や住民票を、本人の同意なく不正に取得すること。 これは探偵にもできません。法律で禁じられており、「戸籍をたどって割り出す」とうたう業者は危険です。
  • 違法な取り立て・晒し・押しかけの手伝い。 これらは調査ではなく、あなたを加害者に変える行為です。まともな探偵は、決して手を貸しません。

そして、いちばん大切な線引き。探偵は、突き止めた情報を使って、あなたが自力で相手に接触し「取り返す」ための手伝いはしません。特定した情報は、警察・弁護士・裁判所という正規のルートに乗せてこそ、あなたの回復につながる。探偵に頼めることと頼めないことの境界は、こちらに具体例で。→ 探偵に頼めること・頼めないこと

相談前に、そろえておく手がかりのチェックリスト

所在・身元の調査は、依頼者が持っている手がかりの質で、進みやすさが大きく変わります。相談の前に、次を思い出せる範囲でメモしておくと、話がスムーズになり、精度も上がる。完璧でなくて構いません。あるものを、正直に。

  • 相手が名乗っていた氏名(本名・通称・読み方・別名の心当たり)と肩書き・所属(軍人・医師・実業家など)
  • 顔写真・動画・ボイスメッセージ(古くても、複数あるほどよい)
  • 電話番号・LINE ID・SNSアカウント・メールアドレス・指定された連絡アプリ
  • 送金先の口座名義・支店・番号、暗号資産なら送金先アドレス、誘導された取引アプリの名前
  • 相手が口にした勤務先・国・地名・家族構成、会うと言っていた場所
  • 時系列のメモ(知り合った時期/愛を語られた時期/送った金額と日付の一覧/連絡が途絶えた時期)
  • なぜ突き止めたいのか、突き止めてどうしたいのか(お引き受けできる依頼かの判断にも関わります)

このリストは、そのまま「回復の設計図」になります。ためらって手がかりを出し惜しむと、その分だけ調査が遠回りになる。相談で必ず確認しておくべきことは、こちらに。→ 無料相談で必ず聞く8つのこと

費用は、何で決まるのか

「いくらかかるのか」は、いちばん気がかりなところだと思います。金額そのものは事務所ごと・ケースごとに大きく異なるため、必ず各社の見積もりで確認してください。ここでお伝えするのは、「何で費用が上下するか」です。

  • 手がかりの量と質。 口座名義・電話番号・写真・誘導アプリなどがそろっていれば出発点が明確で、比較的早く、費用も抑えやすい。名乗った名前だけ、それも偽名らしい、という状態からだと、手間も日数も増える傾向があります。
  • 相手の用心深さと、国内外の別。 使い捨て番号・拾い画像・海外拠点を前提に動く相手ほど、痕跡が薄く、日数がかさむ。国際案件は、国内案件より不確実性が高い。
  • 調査の範囲。 国内の受け子・接点の特定までなのか、生活実態まで押さえるのかで変わります。

契約前に、費用の内訳と、追加料金が発生する条件を、書面で確認してください。そして、極端に安い見積もりにも、「必ず海外まで追える」という甘い言葉にも、同じく注意を。地道な手間のかかる仕事です。「予算のなかで、どこまで現実的にできるか」を率直に相談する——これが、後悔しないための近道。まともな事務所なら、できることとできないことを、正直に説明してくれます。

よくある質問

Q. これは本当に詐欺なんでしょうか。まだ、信じたい気持ちがあります。

その迷いは、あなたが誠実だった証拠です。判断の目安を一つ。会おうとすると必ず邪魔が入る/顔をビデオで見せない/お金の話が繰り返される/出金しようとすると追加を求められる——この型に複数当てはまるなら、恋の顔をした被害の可能性が高い。信じたい気持ちと、事実を確かめることは、両立します。まず事実を固めてから、気持ちの答えを出しても遅くない。

Q. 名前も肩書きも、たぶん全部嘘です。それでも特定できますか?

偽名・拾い画像・作られた肩書きは、ロマンス詐欺では珍しくありません。ただ、人は完全には嘘をつききれない。電話番号、送金先の口座名義、指定された連絡アプリ、待ち合わせに使った場所——どれか一つでも本物が混じっていれば、そこが糸口になります。とりわけ国内の口座名義は、海外の相手でも国内側に残る貴重な破片です。諦める前に、手元の断片を全部洗い出しましょう。

Q. 暗号資産で送りました。もう戻ってこないですか?

正直に言えば、暗号資産や海外送金は、追跡・回収がもっとも難しい部類です。「必ず取り戻せます」と着手金を求める相手には、絶対に応じないでください。それが回収詐欺の入口です。ただ、送金先アドレスや記録は、警察・弁護士が動くうえで唯一の手がかりになることがあるので、一つ残らず保全してください。可否は必ず専門家に確認を。

Q. 相手を見つけたら、直接会って問い詰めてもいいですか?

やめてください。押しかけ・待ち伏せ・SNSでの晒しは、あなたを「加害者」に変えます。相手が「つきまとわれた」「名誉を傷つけられた」と主張すれば、被害者だったはずのあなたが責任を問われかねない。突き止めた情報は、警察・弁護士という正規のルートに乗せる。これが、あなたを守りながら回復に進む唯一の道です。

Q. 恥ずかしくて、家族にも誰にも言えません。

その恥ずかしさこそ、加害者がいちばん利用しているものです。「言えないだろう」と見越して、被害は水面下に沈められる。でも、専門の窓口は、こうした相談を毎日受けています。あなたが最初の一人ではないし、最後の一人でもない。打ち明けることは、負けではなく、回復の始まりです。

Q. 「返金できます」とDMが来ました。頼っていいですか?

応じないでください。ほぼ回収詐欺です。被害者を名指しで探し当て、先に着手金・手数料を求め、「必ず」「100%」を口にする——全部、二次被害の合図です。正規の窓口は、警察・弁護士・届出済みの探偵。向こうから都合よく現れる“救済者”は、疑ってかかる。

Q. 相手には、私のほかにも被害者がいそうです。

複数の相手に同時に仕掛ける型は、ロマンス詐欺では典型です。他の被害者の存在は、詐欺の常習性・組織性を示す重要な事実になりえます。ただし、自分でSNSで被害者を探し集めて接触するのは、思わぬトラブルを招く。まず自分の証拠と手がかりを固め、警察・弁護士に相談する流れのなかで扱うのが安全です。

突き止めることは、あなたを取り戻すこと

ロマンス詐欺の相手を特定するのは、復讐のためでも、感情をぶつけるためでもありません。渡したお金を正当に取り戻すため、次の被害を止めるため、そして「自分が誰と関わっていたのか」を知って、前へ進むためです。

  • まず、相手の「本名」と「所在」を突き止めることが、あらゆる回復手続きの入口になる
  • 国際案件・暗号資産は、回収が難しい現実がある。だから“出金”を求められても、これ以上入れない
  • 自分で問い詰める・晒す・取り立てるのは、手がかりを消し、立場を逆転させる
  • 集めた証拠は「晒す」のではなく、警察・弁護士・裁判所に「渡す」
  • 「必ず取り戻せます」と近づく回収詐欺には、絶対に応じない
  • 金額や法的な当否は、この記事では断言しない。必ず弁護士・警察に相談を

送金の履歴を上から順になぞりながら、あなたはまだ、恋だったのか詐欺だったのかの答えを、決めかねているかもしれません。でも、これだけは言えます。信じたことは、間違いじゃなかった。ただ、その気持ちを、悪意に利用されただけです。愛せる力があったことまで、否定しないでください。

まずは、話を聞かせてください

「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。

相談無料・秘密厳守/大阪府公安委員会 第62260032号

読んでも解決しないときは、聞いてください

急かしません。まず知ることが、いちばんの安心になります。それでも判断に迷うときは、無料で相談できます。

電話で相談0120-536-073 LINEで相談
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