養育費を払わない元夫|“逃げ得”にさせない、居場所と財産の追い方
「おかけになった電話番号は」の、その先
養育費の振込が、3ヶ月、止まっています。最初の月は「忙しいのかもしれない」と思った。二月目に送った催促のLINEは、既読すら付かなくなった。そして三月目のある日、意を決してかけた電話は、「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」——機械の声に、変わっていました。
スマホを持ったまま、しばらく動けなかったのではないでしょうか。怒りより先に来たのは、たぶん、冷たい足元の感覚です。来月の学童の月謝。習い事をどうするか。「養育費は毎月払う」と、あの人は確かに約束したのに、その約束ごと、消えた。
まず、これだけは先にお伝えします。連絡が取れなくなっても、養育費の請求権は消えません。 元夫が電話番号を変えても、引っ越しても、転職しても、支払う義務そのものは残っています。問題は、義務があるかどうかではなく、「どこにいるか分からない相手から、どうやって回収するか」——ここからは、その一点に絞って、順番にお話しします。
最初に確認してほしいのは、あなたの手元の「紙」
意外に思われるかもしれませんが、次の一手を決めるのは、元夫の居場所より先に、あなたの手元にある取り決めの「形」です。離婚のとき、養育費をどう約束しましたか。
① 強制執行認諾文言付きの公正証書、または調停調書・審判書・判決がある場合。 あなたはすでに、いちばん強い切り札を持っています。これらの書面があれば、裁判をやり直すことなく、強制執行(給与や預貯金の差押え)を申し立てられます。 元夫の給与を、勤務先から直接差し押さえる——「払う気になるのを待つ」のではなく、手続きで回収する道が、もう開いているのです。
② 口約束や、当人同士の念書だけの場合。 残念ながら、その約束だけでは差押えはできません。まずは家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立て、調停調書という「執行できる紙」に変えるところからです。相手の住所が分からなくても申立て自体の相談はできますので、この場合は家裁や弁護士に早めにつないでください。ここは探偵ではなく、法律の専門家の領域です。
どちらの場合でも、この先に共通して立ちはだかる壁があります。それが、次の話です。
差押えの前に立ちはだかる、「どこにいて、どこで働いているか」
強制執行は、書面さえあれば自動的に進むものではありません。申立てには、実務上、相手の現住所が必要になり、給与を差し押さえるなら勤務先を特定して裁判所に示す必要があります。つまり——
- 元夫がどこに住んでいるか(現住所)
- 元夫がどこで働いているか(給与の差押え先)
この二つが分からない限り、せっかくの公正証書も、宝の持ち腐れになってしまう。養育費から逃げる人は、これを分かっていて姿を消します。引っ越して、番号を変えて、ときには転職までして、「差し押さえようがない状態」を作るのです。
なお、2020年の民事執行法改正で、裁判所を通じた財産開示手続や、市町村・金融機関など第三者からの情報取得手続が強化され、逃げ得は以前より難しくなりました。ただし、これらの手続きには要件や段取りがあり、使えるかどうかはケースによります。詳細は必ず弁護士に確認してください。ここでは「裁判所ルートの手段も強くなっている」とだけ、押さえておけば十分です。
探偵の所在調査が引き受けるのは、この「二つの特定」
探偵が力になれるのは、まさにこの部分——逃げた元夫の「現住所」と「勤務先」を、合法的な調査で特定することです。
所在調査では、あなたが持っている手がかり(旧住所、実家、勤務していた会社、車、交友関係、SNSの痕跡など)を起点に、聞き込み・データ調査・現地確認を積み重ねて、現在の生活拠点を突き止めていきます。引っ越し先が分かれば、そこから通勤の実態を確かめて勤務先の特定へつなげる、という流れです。人探し・所在調査の基本的な進め方は、所在調査とは何をどう調べるのかに整理しています。
似た構図の調査に、お金を貸したまま連絡が取れなくなった相手の所在調査があります。「債権はあるのに、相手の居場所が分からず回収できない」——養育費も法的には同じ構図で、所在と財産(勤務先)さえ特定できれば、あとは法律の手続きに乗せられるという点も共通しています。
一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。探偵にできるのは「特定」までで、差押えの申立てや回収そのものは、弁護士と裁判所の仕事です。逆に、弁護士は法律のプロですが、姿を消した相手を足で探すことは本業ではありません。だから実務では、探偵が所在と勤務先を特定し、その報告書を持って弁護士が強制執行を申し立てる——この連携が、いちばん確実な型になります。探偵に何ができて何ができないかは、探偵にできること・できないことで線引きを確認してください。
「自分で探す」の落とし穴と、やってはいけないこと
費用を考えれば、まず自分で探したくなるのは当然です。共通の知人に聞く、実家に連絡する、SNSを辿る——手がかり集めとして、どれも意味があります。ただ、二つだけ注意してください。
一つは、動きが相手に伝わると、さらに深く潜られること。共通の知人経由の探りは、高い確率で本人の耳に入ります。「探されている」と知った相手は、SNSを消し、実家にも口止めをして、手がかりそのものを消しにかかります。探すと決めたら、静かに動くことが鉄則です。
もう一つは、違法な手段に手を出さないこと。住民票の不正取得を持ちかける業者、「携帯番号から住所が分かる」とうたう名簿屋——追い詰められた気持ちに付け込む違法業者は、実在します。そこで得た情報は法的手続きに使えないばかりか、あなた自身が加害者側に立たされかねません。見分け方は違法な調査を依頼してしまうリスクにまとめています。
費用の考え方と、一人で抱えないための窓口
所在調査の費用は、一律ではありません。ざっくり言えば、手がかりの量と鮮度で決まります。 旧住所・実家・元勤務先・車のナンバーなどが揃っていれば調査範囲は絞れ、費用も期間も抑えられる。逆に「名前と昔の番号しか分からない」となれば、範囲が広がるぶん費用も上がります。だからこそ、依頼の前に手がかりを紙に書き出しておくことが、そのまま節約になります。どれくらいの期間と確率で見つかるものかは、人探しにかかる期間と見つかる確率も参考にしてください。
書き出す手がかりは、たとえばこんなものです。元夫の生年月日と旧住所、実家の住所、以前の勤務先と業種・職種、車種とナンバー、よく行っていた店や趣味、親しい友人の名前、覚えているSNSのアカウント、最後に振込があった銀行名。 「こんな古い情報が役に立つのか」と思うものほど、調査の起点になります。離婚時の書類や年賀状、昔のLINEのやり取りも、消さずに残しておいてください。
そして、探偵だけがあなたの味方ではありません。多くの自治体には養育費確保の支援制度(公正証書作成費用や保証契約の補助など)があり、法テラスでは収入等の条件を満たせば無料の法律相談や弁護士費用の立替制度が使えます。ひとり親支援の窓口に「養育費が払われなくなった」と伝えるだけで、使える制度を案内してもらえます。お金がないから動けない、と決めつける前に、この二つは必ず当たってみてください。無料相談で何をどう聞けばいいかは、無料相談で聞くべきことにまとめています。
まとめ:感情ではなく、手続きで詰める
「おかけになった電話番号は」——あの機械の声は、あなたと子どもへの裏切りに聞こえたはずです。でも、番号を消しても、義務は消せません。取り決めの紙を確認する。なければ調停で作る。あとは、所在と勤務先を特定して、差押えの手続きに乗せる。 逃げた側が最後に頼るのは「見つからないこと」だけで、そこさえ崩せば、感情に頼らず、手続きで回収できます。
あなたが守ろうとしているのは、あなたの意地ではなく、子どもとの生活です。手がかりがどれだけ残っているか、そこからどこまで詰められるか——まずは無料相談で、手の内を一緒に棚卸しするところから始めてください。一人で、あの機械の声を聞き続けないでください。
まずは、話を聞かせてください
「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。