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金を貸した相手が引っ越して逃げた|所在調査で居場所をつかみ、正当に回収するかを判断する

読了目安 約22分実務は主任調査員監修/法律部分は弁護士監修公開 2026.08.25

家を訪ねたら、もう別の人が住んでいた

「来月には返す」。その言葉を、あなたは信じた。

友人だったから。世話になった相手だったから。困っているのを見過ごせなかったから。理由はどうあれ、あなたは自分のお金を渡した。ところが、返済の期日が近づくにつれて、相手の返事は鈍くなり、やがて電話に出なくなった。LINEは既読すらつかない。思い切って住所を訪ねてみたら、表札は別の名前に変わっていて、大家か管理会社に聞けば「先月、退去されました」と言う。——引っ越して、消えた。

このとき、こたえるのはお金の額そのものより、「信じていた相手に、逃げ切られようとしている」という感覚のほうかもしれません。連絡が取れないだけなら、まだ待てた。でも、住所ごと変えて姿を消したとなると、話が違う。「もう、どこにいるかも分からない相手から、どうやって返してもらえばいいのか」。そう思いながら、夜、こうして調べている。

先に、はっきりさせておきます。あなたのその怒りも、取り戻したいという望みも、まっとうです。正当に貸したお金を、正当に返してもらう——これは、当たり前の権利です。そして、相手が引っ越して所在が分からなくなったとしても、打つ手は残っています。ただし、その手には順番があり、どの手を選ぶかは、あなたのケースによって変わります。

この記事は、「とにかく探偵に頼めば解決する」とも、「自分で頑張れば見つかる」とも言いません。そうではなく、あなたが今どの分かれ道に立っていて、どちらへ進むのが自分のケースに合うのかを、一緒に見極めるための記事です。自分で追うべきか、専門家に所在調査を頼むべきか、いったん見送るべきか。所在が分かったとして、どの回収ルートを選ぶのか。判断の材料を、順番に並べていきます。

なお、貸した相手が行方不明になったとき全体の進め方は、お金を貸した相手が行方不明のときの動き方にまとめてあります。この記事は、そこから一歩踏み込んで、「引っ越して所在がつかめない」ケースの判断に絞ります。

まず、あなたの状況は「連絡拒否」か「所在不明」か

同じ「返してくれない」でも、状況によって、やるべきことがまるで変わります。最初に、自分がどちらに近いかを見立ててください。ここを取り違えると、遠回りになります。

(A)連絡は取れないが、居場所は分かっている。 相手の今の住所を知っていて、そこに確かに住んでいる。ただ、電話やメッセージを無視されているだけ。——この場合、探すべき「所在」はすでに手元にあります。あなたに必要なのは調査ではなく、正式な請求の手続きです。内容証明を送るところから始められる。所在調査は要りません。

(B)引っ越して、今どこにいるか分からない。 前の住所からは退去済みで、転居先が分からない。連絡手段も断たれている。——この記事が主に扱うのは、こちらです。回収の手続きに進む前に、まず「今どこにいるか」を突き止める必要があります。ここが最大の壁であり、判断の分かれ目です。

(C)名前や連絡先すら、あやふや。 ネットの掲示板やアプリで知り合った相手に貸してしまい、本名も定かでない、というケース。——難度は一気に上がりますが、それでも手がかりゼロとは限りません。やり取りの記録や振込先が、糸口になることがあります。

多くの人が、実際には(B)にいながら、(A)のつもりで内容証明を送ってしまい、「あて所に尋ねあたりません」と封筒が戻ってきて、そこで初めて(B)だと気づきます。だから、動き出す前に、相手が本当に前の住所にいないのかを確かめることが、最初の一手になります。

「封筒が戻ってくる」は、所在不明の確定サイン

自分が(A)なのか(B)なのかを、はっきりさせる、いちばん分かりやすい方法があります。相手の最後に分かっている住所へ、記録の残る形で郵便を送ってみることです。

内容証明郵便や、配達の記録が残る郵便を、旧住所へ宛てて出す。相手がまだそこに住んでいれば、届きます(受け取りを拒否されることはあっても、「届く」という事実は残る)。ところが、すでに引っ越していて、転居届も出していなければ、封筒は「あて所に尋ねあたりません」という付箋つきで、あなたの手元に戻ってきます。

この戻ってきた封筒は、ただの失敗ではありません。「相手はもう、この住所にいない」という、動かぬ証拠です。感情としてはこたえますが、判断材料としては大きい。ここで、あなたのケースが(B)=所在不明であることが確定し、「まず所在を突き止めなければ、次に進めない」という方針が、はっきりします。

戻ってきた封筒は、捨てずに取っておいてください。後で法的な手続きに進むとき、「請求しようとしたが、相手が所在不明で届かなかった」という経緯を示す資料になります。ちなみに、この「督促状が戻ってきた」状態から回収を組み立て直す流れは、保証をつけて貸した相手や連帯保証人が夜逃げしたケースでも同じで、封筒が戻ってきたときの、居場所をつかんで回収する順番に詳しくまとめてあります。

分かれ道①:自分で追うか、専門家に任せるか、いったん見送るか

所在不明だと分かったとして、次にあなたが立つのが、この三叉路です。それぞれに、向くケースと向かないケースがあります。金額や手がかりの多さと照らして、自分がどこにいるかを見てください。

自分で追うのが現実的なケース。 手がかりが比較的新しく、豊富に残っている場合です。たとえば、共通の知人が相手と今も付き合いがある、相手のSNSが生きていて更新されている、勤務先が変わっていないらしい——こうした「今につながる線」が手元にあるなら、まず自分で確かめる価値があります。費用もかかりません。うまくいけば、それで所在が分かることもあります。

専門家の所在調査が向くケース。 手がかりが「当時のまま」で止まっていて、今につながらない場合です。旧住所しか分からない、SNSは消されている、共通の知人も口をつぐむか連絡が取れない——ここまで来ると、素人の追跡は、たいてい行き止まります。相手が意図的に足取りを消しているほど、その傾向は強い。合法の範囲で古い情報を「今」に結びつける作業は、経験と手数がものを言う領域で、ここが専門家の出番です。

いったん見送る、という判断もある。 これは負けではありません。貸した額に対して、調査と回収にかかる手間・費用・時間が見合わないなら、「今は動かず、時効だけ止めておく」という選択も、冷静な判断です。ただし、見送るにしても、後述する消滅時効への手当てだけはしておかないと、待っているうちに権利そのものが消えます。ここは注意が要ります。

大事なのは、この三択を、感情ではなく、手がかりの状態と金額で決めることです。「悔しいから何が何でも追う」でも、「面倒だから諦める」でもなく、自分の手札を見て、いちばん割の合う道を選ぶ。その判断のために、次から、それぞれの中身を詳しく見ていきます。

自分でできる手がかりの棚卸しと、その限界

まず、専門家に頼むかどうかを判断するためにも、自分の手札を全部テーブルに広げることから始めます。相手が金銭のからむ相手である場合、貸し借りの過程で、思っている以上に情報が手元に残っているものです。次のものを、探せる範囲でかき集めてください。

  • 相手の氏名(フルネーム、読み方、旧姓や通称、結婚などで姓が変わっている可能性も含めて)
  • 最後に分かっている住所(古くても、退去済みでも構いません。追跡の起点になります)
  • 過去の勤務先・屋号・出入りしていた店
  • 電話番号・メールアドレス・SNSのアカウント名
  • 振込に使った口座情報(貸したときに送金したなら、その控え)
  • 借用書・念書・契約書、あるいは「必ず返す」と書かれたLINEやメールのやり取り
  • 共通の知人(相手と今も接点がありそうな人がいれば、大きな糸口です)
  • 相手の車のナンバー、よく行く場所、生活のくせ
  • 最後に会った・連絡が取れた時期と、そのときの様子

これを広げてみると、二つのことが見えてきます。一つは、回収の手続きで使う証拠が、どれだけそろっているか。もう一つは、所在を追うための手がかりが、今につながっているかどうか。

そのうえで、自分で試せることがあります。SNSで名前やアカウントを検索する。共通の知人に「最近あの人と連絡取った?」とそれとなく尋ねる。過去の勤務先が今も稼働しているか、公開情報で確かめる。ここまでは、無理のない範囲です。

ただし、相手が本気で逃げている場合、自分でできることは、たいてい途中で途切れます。連絡先は変えられ、SNSは消されるか鍵がかかり、共通の知人は「かばっている」か「口止めされている」。そして、ここから先が肝心です。手がかりが途切れたからといって、踏み込みすぎてはいけません

たとえば、他人になりすまして勤務先に居場所を聞き出す、相手の車やカバンに無断でGPSを取り付ける、家族に押しかけて問い詰める——こうした行為は、あなたが正当な貸し手であっても、別の法律に触れます。何ができて、どこからが危険なのかの線引きは、探偵にできること・できないことと、個人情報の扱いと探偵に整理してあります。手がかりが途切れた地点が、専門家に渡すべき境目だと考えてください。

分かれ道②:待つか、動くか——消滅時効という締め切り

「そのうち向こうから連絡してくるかも」「もう少し様子を見よう」。そう思って待つ人は、少なくありません。気持ちは分かります。でも、貸したお金を返してもらう権利には、期限がある——これだけは、動く・動かないを判断する前に、必ず頭に入れてください。

お金を返してもらう権利(債権)は、一定の期間、何もしないまま放っておくと、消滅時効によって、法律上、請求できなくなることがあります。相手が「時効だ」と主張すれば、正当に貸したはずのお金が、取り戻せなくなる。何年で時効になるか、いつから数え始めるか、途中で止める方法があるか——ここは貸した時期や事情によって変わり、専門的な判断が必要な部分なので、この記事で具体的な年数には踏み込みません。

ただ、判断のうえで押さえるべき原則は、はっきりしています。待つほど、あなたは不利になる。 時効の締め切りが近づくだけでなく、時間が経てば相手の足取りはさらに古くなり、共通の知人とも連絡が取れなくなり、あなた自身の記憶も薄れていく。所在を追う難度も、回収の見込みも、待つほどに下がっていきます。

だから、「見送る」を選ぶ場合でも、時効を止める手当てだけは、早めに専門家(弁護士)に相談しておくことをおすすめします。時効は、正式な請求や、相手が一部でも支払った事実、あるいは裁判上の手続きによって、進行を止めたりリセットしたりできる場合があります。逆に言えば、その手当てをしないまま「待つ」のは、時計の針が締め切りに向かって進むのを、ただ眺めているのと同じです。「今は回収を急がないが、権利だけは守っておく」——この判断ができるかどうかが、後で大きく効いてきます。

所在が分かったら、どの回収ルートを選ぶか

相手の今の居場所を突き止められたとしましょう。ここからが、本来の目的である回収です。そして、ここでも判断が要ります。回収の手段は一つではなく、金額・証拠のそろい具合・相手の出方によって、向くルートが変わるからです。全体像として、一般的には次のような選択肢があります。細かい判断は弁護士の領域ですが、比較の軸を知っておくと、相談がぐっとスムーズになります。

内容証明郵便で、まず正式に請求する。 どのルートを選ぶにしても、たいていの第一歩はこれです。「いつまでに、いくら返してほしい」を、記録の残る形で正式に伝える。相手がこれで任意に払えば、裁判までいかずに解決します。所在さえ分かれば、まず送ってみる価値がある。前述のとおり、これは時効を止める手当てにもなり得ます。

支払督促——相手が争ってこなさそうなとき。 簡易裁判所を通じた手続きで、書類のやり取りが中心。相手が異議を申し立てなければ、比較的手間をかけずに、回収に向けた効力を持たせられます。相手が「借りた事実自体は認めているが払わない」タイプで、正面から争ってくる気配が薄いケースに向きます。逆に、相手が事実を否認して争ってきそうなら、異議で通常訴訟に移るので、最初から次の手を考えたほうがよいこともあります。

少額訴訟——金額が比較的小さく、証拠がそろっているとき。 少額の金銭トラブル向けに用意された、原則1回の期日で終わる簡単な裁判です。借用書や振込記録がそろっていて、争点が「貸したか・返したか」だけ、というシンプルなケースに向きます。金額が大きい場合は使えないので、その場合は次へ。

通常の民事訴訟——金額が大きい、または争いが複雑なとき。 金額が大きい、相手が「もらったものだ」「返した」などと真っ向から争ってくる、事情が込み入っている——こうしたケースは、通常訴訟でしっかり争うことになります。時間も手間もかかるぶん、弁護士と組んで進めるのが現実的です。

判断の軸を、ざっくり整理すると——争ってこなさそう×手続きは軽くなら支払督促、少額×証拠が固いなら少額訴訟、高額または争いが複雑なら通常訴訟、そしてどのルートでも、入口は内容証明。どれが自分のケースに合うかは、金額と証拠と相手の出方を見て、弁護士に相談して決めるのが確実です。いずれのルートも、相手の住所が分かっていることが大前提——だからこそ、その手前の所在調査が、回収全体の土台になるわけです。

探偵の「所在調査」は、何をして、どこで手を引くのか

自分で追って行き止まったとき、その先を合法の範囲で手繰るのが、探偵の所在調査です。ここで、何を期待していいのか、その輪郭をお伝えします。

まず、期待してはいけないもの。所在調査は、「名前を入れたら住所が出てくる」魔法ではありません。そして、戸籍や住民票を、正当な理由なく他人が取得することはできません。それを裏ルートで手に入れる、といったやり方は違法で、まっとうな事務所は一切やりません。「どんな手を使ってでも見つける」と豪語する業者ほど、危うい。合法の線を越えた調査は、後であなたを守らないどころか、あなたの立場を悪くします。違法な依頼になりうるケースは、探偵に依頼すると違法になるのかを読んでおいてください。

そのうえで、所在調査が実際にやることは、ひとことで言えば、「あなたが持っている当時の手がかり」と「今の情報」を、合法的な方法で一本の線につなぐ作業です。旧住所、勤務先、電話番号、共通の知人、口座、車のナンバー——こうした断片を起点に、引っ越しや改姓で見えなくなった「今」の部分を、法に触れない範囲の手法で少しずつ埋め、最後は現地で確認して「今このあたりにいる」という事実を裏づける。手法の細部はケースごとに違い、ここで手の内を明かすことはできませんが、考え方の骨格はこれです。

金銭トラブルの相談には、一つ、心強い特徴があります。貸し借りの過程で、相手の情報が意外と手元に残っていることです。「もう何の手がかりもない」とおっしゃる方でも、話をうかがうと、振込の控え、当時のLINE、車のナンバーの記憶といった、ご本人が「手がかりだと思っていなかったもの」が、糸口になることがよくあります。だから、判断の前に、まず手元のものを正直にすべて出してみる——それだけで、「自分で追えるのか、専門家が要るのか」の見極めが、ずっと正確になります。

そして、探偵がやるのは、「相手が今どこにいるか」を突き止めるところまでです。そこから先、お金を請求し、支払わせる手続きは、探偵の仕事ではありません。それは弁護士や裁判所の領域だと、法律で決まっています。つまり所在調査は、回収そのものではなく、回収を「始められる状態」にするための調査。所在という土台がそろって初めて、前の章で見た内容証明や訴訟に進める、という位置づけです。誠実な事務所は、所在を特定したら、そのバトンを弁護士へきちんと渡せる体制を持っています。所在調査で何ができて何ができないか、全体像は所在調査という選択にまとめてあります。

やってはいけない判断——感情的な取り立てが、立場を逆転させる

ここは、この記事でいちばん強くお伝えしたいところです。所在が分かった瞬間、いちばん危険な判断が頭をよぎるからです。「もう場所は分かった。直接乗り込んで、返させてやる」——その衝動を、どうか、いったん止めてください。

貸したお金が正当でも、取り戻し方には、法律による決まりがあります。それを踏み外すと、正しい側にいたはずのあなたが、今度は罪に問われます。具体的には、次のような行為は、絶対にやってはいけません。

  • 相手の家や職場に押しかけて、大声を出す・居座る → 威迫や、生活・業務の平穏を害する行為として問題になります。
  • 深夜や早朝に、繰り返し電話やメッセージを送りつける → しつこい連絡は、つきまといや脅迫と評価されるおそれがあります。
  • 「返さないとどうなるか分かっているな」といった脅し文句を使う → 強要や脅迫に問われるおそれがあります。
  • SNSや貼り紙で、実名や写真を出して「金を返さない詐欺師だ」と晒す → 名誉毀損にあたるおそれがあります。事実であっても、公然と人の評価を下げれば、罪に問われることがあります。
  • 勝手に相手の家に入る・私物を持ち去る → 住居侵入などの犯罪です。「貸した分を勝手に取り返した」も認められません。

正当な権利の実現は、必ず法律の手続きを通して行う。自分の手で直接取り立てる「実力行使」は、たとえ相手が悪くても、認められていません。逃げられた悔しさが強い人ほど、「合法とか関係ない、直接言ってやりたい」という気持ちになりがちです。その気持ちは分かる。けれど、そこで一歩踏み外すと、返してもらうどころか、あなたが加害者として責められる——この逆転だけは、避けなければなりません。

所在の特定は合法に。回収は正規の手続きで。取り立ては、絶対に自力でやらない。 この順番を守ることが、遠回りに見えて、いちばんの近道であり、あなた自身を守る命綱です。なお、相手が「そっとしておいてほしい」事情——たとえばDVから逃れているなど——を抱えているケースでは、そもそも接近自体が別の問題を生むこともあります。この線引きはストーカー・DVと法律を参照してください。

費用と回収額を、天秤にかける

動くと決める前に、もう一つ、冷静な判断が要ります。かける費用と、取り戻せる見込みの、釣り合いです。

所在調査の費用は、事務所ごと・事案ごとに大きく違うので、金額そのものは必ず見積もりで確認してください。ここでお伝えするのは、「何で費用が上下するのか」という考え方です。いちばん大きく効くのは、やはり手がかりの量と新しさ、そして相手が意図的に隠れているかどうかです。

  • 手がかりが多く・新しく、相手が特に隠れてもいないなら、難度は下がり、費用も抑えやすい。 たどる筋道が短く済みます。
  • 手がかりが少なく・古く、相手が本気で足取りを消しているなら、難度が上がり、費用もかさむ。 埋めるべき空白が大きく、手間と時間がかかります。

だから、費用を抑えるいちばんの方法は、あなた自身の手がかりを、できる限りそろえて出すことです。前に挙げた棚卸しを充実させるほど、調査の初動が速くなり、結果的に費用が下がる。ここは、あなたにできる、最も効果的な準備です。費用の相場観と内訳の見方は、人探し・所在調査の料金の考え方で確認できます。

そのうえで、天秤にかけてください。貸した額に対して、調査費用と、その後の回収手続きの手間が、見合うか。 大きな額なら、多少の調査費をかけてでも所在を突き止め、回収に進む価値があります。逆に、額が小さく、相手が財産らしい財産も持っていなさそうなら、「所在は特定できても、実際に取り戻せる保証はない」ことも、正直に見ておくべきです。所在が分かることと、実際に回収できることは、別の話だからです。誠実な事務所は、この費用対効果を、あなたと一緒に冷静に見積もります。「必ず見つけて、必ず回収できます」と言い切る業者は、むしろ疑ってください。所在調査に、成果の保証はありません。

事務所を選ぶときの、判断基準

もし専門家に頼むと決めたなら、事務所選びにも判断基準があります。最初の基準は、金額の安さではありません。探偵業の届出があるかです。営業所のある都道府県の公安委員会への届出は法律上の義務で、信頼できる事務所は届出番号を公式サイトに掲げています。番号が見当たらない事務所、「戸籍でも何でも取れる」と合法の線を越えた手を匂わせる事務所は、候補から外して差し支えありません。

もう一つ、金銭トラブルの所在調査で見ておきたいのが、弁護士と連携できる体制があるかです。この種の相談は、所在を特定して終わりではなく、その後の回収まで見据える必要があります。「所在は分かったが、この先どうすれば」という状態であなたを放り出さず、法律の専門家へバトンを渡せる事務所のほうが、結果的に回収まで届きやすい。事務所選びの目の付けどころは、探偵事務所の選び方にも整理してあります。

よくある質問

Q. 相手が引っ越したかどうか、確かめる簡単な方法はありますか。

記録の残る郵便を、最後に分かっている住所へ送ってみるのが分かりやすい方法です。まだ住んでいれば届き、引っ越して転居届も出していなければ「あて所に尋ねあたりません」と戻ってきます。戻ってきた封筒は、所在不明を示す資料になるので、捨てずに取っておいてください。

Q. 名前と振込先の口座しか分かりません。所在は突き止められますか。

断言はできませんが、口座情報や振込の記録は、有力な手がかりの一つです。それに加えて、当時の住所、勤務先、共通の知人、車のナンバーなど、ほんの少しでも他の材料が添えられると、精度が大きく変わります。まずは手元にあるものを、思い出せる限り出してみてください。「手がかりだと思っていなかったもの」が糸口になることは、よくあります。

Q. 借用書がありません。それでも回収できますか。

借用書がなくても、諦めるのは早いです。振込の記録、「必ず返す」と書かれたLINEやメール、返済の約束をしたやり取りなど、貸した事実と金額を裏づける材料があれば、証拠になり得ます。何がどこまで使えるかは、弁護士に相談して判断するのが確実です。まずは、貸し借りにまつわる記録を、できるだけ集めておいてください。

Q. 所在が分かったら、探偵が代わりに取り立ててくれますか。

いいえ。探偵ができるのは「今どこにいるか」を突き止めるところまでです。お金を請求し、支払わせる手続きは、弁護士や裁判所の領域だと法律で決まっています。誠実な事務所は、所在を特定したうえで、その先を弁護士へつなぐ体制を持っています。取り立てそのものを請け負う、と言う業者には注意してください。

Q. 少額だし、面倒なので諦めようか迷っています。

見送るのも、一つの冷静な判断です。ただし、何もしないまま待つと、消滅時効で権利そのものが消えてしまうことがあります。「今は回収を急がないが、権利だけは守っておく」ためにも、時効を止める手当てだけは、早めに弁護士に相談しておくことをおすすめします。動くにしても見送るにしても、時計の針は締め切りに向かって進んでいます。

Q. 相手のSNSに、直接「金返せ」と書き込むのはダメですか。

やめてください。実名や写真を出して「金を返さない」と公然と書き込むのは、たとえ事実でも、名誉毀損にあたるおそれがあります。正当な権利を持っていたはずのあなたが、逆に責任を問われることになりかねません。請求は、内容証明や裁判所の手続きという、正規のルートを通してください。

引っ越して消えた、その先へ

住所ごと変えて姿を消した相手を前に、「もう取り戻せないのかもしれない」と、あなたは半ば諦めかけて、この記事を開いたのかもしれません。

でも、ここまで読んだあなたは、もう、ただ悔しがっているだけの場所にはいません。自分の状況が「連絡拒否」なのか「所在不明」なのかを見極め、封筒が戻るかどうかで確かめ、自分で追うか専門家に頼むか見送るかを、手がかりと金額で判断する。時効という締め切りに手を打ち、所在が分かったら金額と証拠に合った回収ルートを選び、取り立ては絶対に自力でやらない。——引っ越して消えた相手から正当に回収する道は、順番と判断さえ間違えなければ、ちゃんと残っています。

まだ、自分で追えるのか専門家が要るのかも決めかねている、手がかりが十分か分からない——その段階でも、手元にあるものを一度整理して見せてもらえれば、次にどちらへ進むのが自分のケースに合うのかを、具体的にお伝えできます。あなたを問い詰める側ではなく、正当に貸したお金を取り戻したいというあなたの望みに寄り添う側として、一緒に判断の材料を並べます。

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※この記事は、一般的な手続きの説明であり、個別の法的助言ではありません。時効の判断、どの回収手続きを選ぶか、証拠の評価などは、弁護士など専門家にご相談ください。実際の対応は、状況やお住まいの地域の運用によって異なる場合があります。

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