誹謗中傷の投稿者特定、費用と期間は今いくら?|2026年・情プラ法時代の相場と手続きの流れ
- 「制度が変わったらしい」——で、結局いくらで、どれくらいかかるのか
- 先に数字:費用30万〜100万円、期間おおむね半年〜1年。ただし——
- 何が変わったのか①——2022年、「二度手間」が「一本」になった
- 何が変わったのか②——2025年4月、名前が変わり、削除の対応が速くなった
- 費用30万〜100万円の「中身」を分解する
- 期間「半年〜1年」の中身——どこで縮み、どこで伸びるのか
- 費用と期間を「押し上げる/押し下げる」要因——比較の目を持つ
- 探偵の周辺調査は、費用対効果で「どこに」効くのか
- それは「割に合う」のか——踏み出す前の損得勘定
- 動く順番——今日できる「無料の一手」から
- 依頼先の選び方——「費用の見せ方」で誠実さは分かる
- よくある質問
- 数字に怯えず、順番で勝つ
「制度が変わったらしい」——で、結局いくらで、どれくらいかかるのか
匿名アカウントに事実無根のことを書かれた。仕事にも、生活にも、じわじわ実害が出ている。放っておけないと思って調べ始めたら、いくつか気になる言葉が引っかかってきた。「発信者情報開示命令」「情プラ法」「制度が変わって、前より特定しやすくなった」——。
でも、あなたが本当に知りたいのは、たぶんそこじゃない。知りたいのは、もっと生々しい二つのことのはずだ。結局、いくらかかるのか。そして、どれくらいの期間がかかるのか。 これが分からないと、動くも動かないも決められない。ネットには「安くできます」と書く業者もいれば、「100万は覚悟を」と脅すような記事もある。どっちが本当なのか、判断がつかない。
先に、この記事の立ち位置を言っておきます。ここでは、匿名の相手を突き止める手続きの「全体像」——誰がやるのか、探偵に何ができて何ができないのか、証拠をどう残すのか——は、あえて深掘りしません。それは別の記事にまとめてあります。→ ネットの誹謗中傷、犯人を特定したい|発信者情報開示の流れ・探偵にできること・時間制限までの完全ガイド
この記事が引き受けるのは、そこから一歩踏み込んだ、「今の制度で、実際にいくら・どれくらいかかるのか」という、お金と時間の現実です。2022年に何が変わり、2025年4月に施行された情プラ法で何が変わったのか。費用相場30万〜100万円という数字は、何にいくら払っている内訳なのか。半年〜1年という期間は、どこで縮み、どこで伸びるのか。そして、その費用と時間を「かける価値があるか」を、どう見極めればいいのか。動く前に、判断の材料をそろえるための記事です。
なお、この先に出てくる金額も期間も、あくまで一般的な目安です。事案によって大きく振れます。個別の見通しや法的な可否は、必ず弁護士に確認してください。この記事は、あなたが弁護士や探偵と話すときに「損をしない質問」ができるようになるための、地図のようなものだと思ってください。
先に数字:費用30万〜100万円、期間おおむね半年〜1年。ただし——
回りくどいのは好きじゃないので、相場から先に置きます。
匿名の投稿者を法的に特定し、責任追及の入り口に立つまでで、費用はおおむね30万円から100万円。期間は、動き出しからおおむね半年、長ければ1年前後。これが、今の一般的な感覚です。
ただし、この数字を見て、あなたに持ってほしくない誤解が二つあります。
誤解その一:「30万で済む」と受け取ること。 30万円というのは、条件が良く、争いが少なく、手続きが最短で進んだ場合の、いわば下限に近い数字です。多くのケースは、その上に積み上がっていきます。しかも、この費用は「投稿者の氏名・住所が分かるところまで」の話。そこから先の損害賠償請求や刑事の手続きに進めば、別の費用がかかります。つまり30万円は、ゴールの値段ではなく、スタートラインに立つための値段に近い。
誤解その二:「100万かかるなら諦めよう」と受け取ること。 100万円というのは、相手が徹底的に争ったり、海外の事業者が絡んだり、手続きが二重三重に必要になった場合の、上振れの数字です。すべての人がここに達するわけではありません。そして、費用は「削れる」余地があります。何を狙い、どこまでやるかを絞れば、幅の中で下げられる。費用の抑え方には、ちゃんと現実的な選択肢があります。→ 探偵の費用が払えないなら、まず「調べる範囲を削れ」
大事なのは、「30〜100万」という幅そのものより、その幅が、どういう要因で決まるのかを理解することです。それが分かれば、あなたのケースが幅のどのあたりに来そうか、見当がつく。ムダに怯えることも、甘く見積もることもなくなる。この記事の本題は、まさにそこです。
何が変わったのか①——2022年、「二度手間」が「一本」になった
まず、いちばん誤解されやすいところを整理します。「制度が変わって特定しやすくなった」と言うとき、実は時期の違う二つの改正が、ごちゃまぜに語られています。ここを分けて理解しておくと、業者や記事の説明の正確さも見抜けるようになる。
一つ目が、2022年(令和4年)10月に施行された、開示手続きの一本化です。これが、費用と期間に直接効く、いちばん実用的な変化でした。
昔——といっても数年前まで——匿名投稿者を突き止めるには、大きく二段階の手続きを踏む必要がありました。ざっくり言うと、こうです。
まず、投稿があったサイトやSNSの運営者に対して、「この投稿は、いつ、どのIPアドレスから書かれたか」を開示させる手続き。これで、投稿者が使っていた回線業者(プロバイダ)が分かる。次に、その回線業者に対して、「その時刻に、そのIPアドレスを使っていた契約者は誰か」を開示させる、別の手続き。ここで初めて、氏名・住所にたどり着く。
問題は、この二つが、別々の裁判手続きだったこと。一段階目で一つの裁判、二段階目でまた別の裁判。当然、それぞれに時間がかかり、それぞれに弁護士費用がかかる。全部終わるのに一年以上、費用も膨らむ——というのが、旧制度のつらさでした。
2022年の改正は、この二度手間を、「発信者情報開示命令」という一つの手続きの中で、まとめて進められるようにしたものです。サイト運営者への請求と、プロバイダへの請求を、いわば一本の流れに束ねられるようになった。これによって、以前よりは速く、そして費用の面でも見通しが立てやすくなった。「制度が変わって特定しやすくなった」という言葉の、いちばん実質的な中身は、この一本化のことだと思ってください。
ただし——ここが冷静になるべきところ——「一本化された=すぐ終わる・安くなる」ではありません。手続きが束ねられても、相手(事業者や投稿者側)が争えば時間はかかるし、裁判所を通す以上、相応の期間は必要です。「二段階が一段階になった」は、「三日が一日になった」という意味ではない。「以前より、詰まりにくくなった」くらいの、地に足のついた理解が正確です。
何が変わったのか②——2025年4月、名前が変わり、削除の対応が速くなった
二つ目の変化が、2025年4月に全面施行された、通称「情プラ法」です。正式には「情報流通プラットフォーム対処法」。長いので、以下は情プラ法と呼びます。
ここで、混乱しやすいポイントを先に潰しておきます。情プラ法は、まったく新しく生まれた法律ではありません。これまで発信者情報開示の根拠になってきた「プロバイダ責任制限法」を改正し、名前を付け替えたものです。だから、ニュースで「新しい法律ができた」と聞いても、ゼロから制度が入れ替わったわけではない。土台は続いていて、上に新しい仕組みが乗った、と捉えるのが正しい。
では、情プラ法で新しく乗ったものは何か。ざっくり言えば、大きなプラットフォーム事業者に対して、「誹謗中傷の削除申請に、もっと速く・もっと透明に対応しなさい」という義務を課したことです。具体的には、削除の申し出を受け付ける窓口を分かりやすくすること、申請から一定の期間内に対応すること、どういう基準で削除するのかを明らかにすること——といった方向の、運用の話です。
ここで大事なのは、情プラ法の主眼は「削除」であって、「投稿者の特定(開示)」そのものを直接速くする改正ではないということ。情プラ法で「削除しやすくなった」のと、投稿者を「特定しやすくなった」のは、軸が違う話です。この二つを混ぜて「情プラ法で特定が速く安くなった」と説明する記事や業者がいたら、正確さを疑っていい。
とはいえ、実務では、この二つは無関係ではありません。誹謗中傷への対応は、たいてい「削除」と「特定」の両輪で考えます。目の前の被害を止めるために投稿を消す(削除)。そして、誰が書いたのか突き止めて責任を取らせる(特定)。情プラ法で削除の道が整理されたことは、被害を早く止めるという意味で、あなたにとって追い風です。ただ、それは費用や期間の話とは別勘定。ここを分けて考えられるかどうかで、見積もりの読み方が変わります。
まとめると——「特定の二度手間を一本にしたのが2022年」「削除の対応を速く・透明にしたのが2025年の情プラ法」。この二つを分けて理解しておけば、あなたはもう、そのへんの説明記事より制度に詳しい。
費用30万〜100万円の「中身」を分解する
さて、本丸の費用です。「30万〜100万」という幅を、ただの数字として眺めても意味がない。何にいくら払っているのかを分解すると、あなたのケースがどのあたりに来るか、急に見えてきます。
まず、大きく分けて、費用の「種類」が三つあると考えてください。
一つ目、削除にかかる費用。 目の前の投稿を消したい、というニーズ。これは特定とは別の作業で、別の費用がかかります。急いで被害を止めたいなら、ここに費用を割く判断もある。
二つ目、特定(開示)にかかる費用。 これが、この記事の中心。匿名の投稿者の氏名・住所を、法的手続きで突き止めるまでの費用です。
三つ目、責任追及(損害賠償・刑事)にかかる費用。 特定できた後、慰謝料を請求したり、刑事告訴を検討したりする段階の費用。特定が終わって初めて発生する、次のフェーズの話。
「30〜100万」という相場は、主に二つ目の特定フェーズを指していることが多い。ここを、さらに細かく見ます。
弁護士に開示手続きを頼むと、費用はおおむね次のような要素で構成されます。着手金(動き出すときに払う費用)、実費(裁判所に納める費用や、書類・郵送などの実費)、そして報酬(うまく特定できたときに払う成功報酬的な費用)。事務所によって料金の組み立て方は違いますが、この三つの合計が、あなたの支払う「特定フェーズの費用」になります。
なぜ、これが30万で収まったり、100万に届いたりするのか。分かれ目は「手続きが何回・何段階必要になったか」です。相手がすんなり情報を出せば、手続きは軽くて済む。逆に、事業者が任意には応じず、あちこちで争いになれば、そのぶん弁護士の手間が増え、着手金や報酬が積み上がる。海外の事業者が絡めば、手続きはさらに重くなる。費用は、作業量に比例する。 これが原則です。
だからこそ、「必ず30万でやります」と最初から言い切る業者も、「どんな場合も100万です」と脅す業者も、どちらも実態とはズレている。誠実な事務所ほど、「あなたのケースは、こういう理由でこのくらいになりそうです。ただし争われればここまで伸びます」と、幅とその理由を説明してくれる。見積もりを取るときは、金額の数字より、その説明の丁寧さを見てください。→ 探偵の料金体系3つの違いと選び方
期間「半年〜1年」の中身——どこで縮み、どこで伸びるのか
費用と同じで、期間も「半年〜1年」という幅の理由を分かっておくと、慌てずに済みます。
すんなり進んだ場合——争いが少なく、事業者もプロバイダも手続きに素直に応じ、投稿者側も強く反論してこない。この場合は、比較的短く収まる可能性がある。それでも、裁判所を通す手続きが複数の相手(事業者、プロバイダ)に対して必要になるので、数か月はかかると見ておくのが現実的です。
争われた場合——投稿者側が「これは正当な批判だ」「権利侵害にはあたらない」と反論してくる、あるいは事業者が任意の開示に応じない。こうなると、手続きの一つひとつに主張・反論のやり取りが挟まり、期間が伸びます。半年を超え、1年に近づいていくのは、たいていこのパターン。
海外の事業者が絡む場合——投稿されたサービスの運営元が海外にあると、手続きに国際的なやり取りが必要になり、時間が読みにくくなります。ここは、期間も費用も上振れしやすい領域。
そして、期間を語るうえで、費用以上に恐ろしい要素があります。通信の記録(ログ)の保存期間です。プロバイダが「いつ、誰が、どのIPを使っていたか」の記録を持っている期間には限りがある。ここを過ぎると、たとえ投稿のスクショが手元にあっても、契約者にたどり着く鎖が途中で切れる。つまり、期間の問題は「手続きが何か月かかるか」だけでなく、「そもそも間に合うか」という締め切りの問題でもある。
だから、期間について本当に頭に入れるべきは、「半年〜1年かかる」という長さより、「動き出しが遅れるほど、間に合わなくなる」というスピードの話です。ログが消えれば、いくら費用を積んでも特定できない。悩んでいる時間そのものが、選べる道を削っていく。この時間の壁の詳しい仕組みは、全体像の記事のほうで解説しています。→ 発信者情報開示の「時間制限の壁」
費用と期間を「押し上げる/押し下げる」要因——比較の目を持つ
ここまでを踏まえて、あなたのケースが幅のどのあたりに来そうか、判断するための一覧を置きます。これが、この記事のいちばん実用的な部分です。
費用と期間を押し上げる(=高く・長くなる)要因:
- 投稿されたサービスの運営元が海外にある
- 投稿者側が徹底的に争う姿勢を見せている
- 権利侵害の成否が微妙で、判断が割れやすい内容
- 投稿件数が多く、一件ずつ手続きが必要になる
- 動き出しが遅く、ログの保存期間が迫っていて、急ぎの対応が重なる
- 特定の後に、損害賠償や刑事までフルで進める
費用と期間を押し下げる(=安く・短くなりやすい)要因:
- 投稿されたサービスが国内の事業者
- 権利侵害が明白で、争いになりにくい内容
- 狙う投稿を、悪質なものに絞り込んでいる(全部やろうとしない)
- 早い段階で証拠がきちんと保全されている
- 心当たりがあり、周辺の事実が整理されている
- 目的が明確で、「どこまでやるか」の線引きができている
この一覧を眺めると、あなた自身にコントロールできる要因と、できない要因があるのが分かるはずです。海外事業者かどうかは選べない。でも、「狙いを絞る」「早く証拠を固める」「目的を決めておく」は、あなた次第。ここを押さえるだけで、幅の中で下のほうに寄せられる。費用は運任せではなく、設計できる。この感覚が持てるかどうかが、損をするかしないかの分かれ目です。
探偵の周辺調査は、費用対効果で「どこに」効くのか
ここで、探偵の話をします。ただし、勘違いしてほしくないのは、探偵が開示手続きを代行するわけではないということ。SNS事業者やプロバイダに情報を出させる法的手続きは、弁護士と裁判所の領域です。「うちが開示させます」「探偵なら安く特定できます」とうたう業者がいたら、それは制度の建て付けを無視している。近づかないでください。探偵に頼めることと頼めないことの線引きは、こちらに整理してあります。→ 探偵に頼めること・頼めないこと
では、探偵は費用対効果のどこに効くのか。この記事の軸である「お金と時間」の目線で、正直に言います。
効きどころ①:心当たりがあるときの、裏取り。 「この匿名アカウントは、たぶんあの人だ」——そういう心当たりがあるケースは、少なくありません。元交際相手、辞めた職場の人間、トラブルのあった取引先。このとき、その人物が実在するか、関与が疑えるかを、合法な調査で先に固めておくと、その後の法的手続きの狙いが定まり、ムダな回り道が減る。特定の作業全体が軽くなれば、結果として費用も時間も抑えやすい。ここは探偵の本領です。→ ネット・SNSで知り合った相手、特定できる場合とできない場合
効きどころ②:投稿内容と現実の突き合わせ。 中傷の文面に、書いた人間しか知りようのない情報が混ざっていることがある。社内の内情、身内しか知らない事実、特定の場所の様子。それが「誰の視点から書かれたものか」を状況として整理できれば、心当たりの精度が上がる。これも、法的手続きに乗せる前の「土台固め」です。
効きどころ③:弁護士との連携の橋渡し。 どこまでが事実の調査で、どこからが法律の手続きなのか。この境目でバトンをうまく渡せると、二度手間や取りこぼしが減る。信頼できる事務所は、弁護士と連携できる体制を持っています。
逆に、費用対効果で言えば、心当たりがまったくなく、純粋に「匿名の投稿者を法的に特定したい」だけなら、探偵にできることは限られる。その場合の主役は弁護士です。ここを正直に言わない業者は、あなたのお金を、効かない場所に使わせようとしている。探偵が価値を出すのは、あくまで「事実の世界の裏取り」。そこを見誤らないでください。頼んだ側が違法になる線もあるので、調べ方には注意が要ります。→ 個人情報保護法と探偵調査とは
それは「割に合う」のか——踏み出す前の損得勘定
費用と期間が見えてくると、次に立ち止まるのが、この問いです。「30万も50万もかけて特定して、それは割に合うのか」。冷たく聞こえるかもしれませんが、これを直視するのは、まったく正しい態度です。感情で突っ走って、後で「こんなはずじゃなかった」となるより、ずっといい。
判断の軸は、大きく三つあります。
軸①:あなたの目的は、お金か、決着か。 もし目的が損害賠償——つまりお金を取り返すことなら、相手に賠償を支払う資力があるかが効いてくる。特定に費用をかけても、相手が無資力なら、回収できないこともある。一方、目的が「金ではなく、二度とやらせないための決着」「公的に責任を問う」ことなら、話は変わる。刑事の道も含めて、費用に対する見方が違ってくる。まず、自分がどちらを求めているのかを、はっきりさせてください。
軸②:被害の大きさと、放置したときのコスト。 事実無根の中傷で、取引が止まった。退職に追い込まれた。心身を崩した。この「放置したときに失い続けるもの」と、特定にかける費用を、天秤にかける。目先の金額だけを見ると高く感じても、被害が続く限り削られ続けるものと比べれば、決着をつける費用のほうが安いことは、珍しくありません。
軸③:勝ち筋があるか。 権利侵害が明白か、証拠が残っているか、ログの保存期間に間に合うか。ここが崩れていると、費用をかけても届かない可能性が上がる。逆に、ここが揃っているなら、費用対効果は高い。この見極めこそ、無料相談で弁護士に率直に聞くべきことです。「私のケースは、費用をかける価値がありますか」と。誠実な専門家は、勝ち筋が薄いなら「やめておいたほうがいい」とも言ってくれます。
割に合うかどうかは、金額の絶対値では決まらない。目的・被害・勝ち筋の三つを並べて、初めて見えてくる。ここを自分の言葉で整理してから相談に行くと、話が早く、費用の見積もりも精度が上がります。
動く順番——今日できる「無料の一手」から
費用と期間の話をさんざんしてきましたが、最後に、いちばん大事なことを言います。あなたが今日、一円もかけずにやるべきことが、一つだけある。 それは、証拠の保全です。
匿名の相手は、旗色が悪くなると、投稿を消し、アカウントを消し、足取りを消す。一瞬でできる。消えてしまえば、どれだけ費用を積んでも、特定の土台そのものが失われる。だから、気づいたその日に、まず記録を固める。これだけは、専門家を待たず、費用もかけず、あなたの手でやっていい範囲です。
残し方の要点は、投稿本文が読める形のスクリーンショット、投稿一件ごとのURL、そして日時。この三点。詳しい残し方と、「相手に気づかせない」ための注意は、別記事にまとめてあります。→ 探偵調査の証拠は「晒すな、渡せ」
そのうえで、動く順番はこうなります。
- 今日、証拠を保全する(無料・自分でできる・急ぐ)
- 目的を整理する(お金か決着か、どこまでやるか)
- 無料相談で、費用感と勝ち筋を聞く(複数に当たっていい)
- やるかどうか、幅と締め切りを踏まえて決める
この順番なら、ムダな費用は発生しません。証拠保全はタダ。相談も、無料の窓口がある。費用が本格的にかかるのは、あなたが「やる」と決めてから。だから、「お金がかかりそうで踏み出せない」という理由で、証拠保全まで止めてしまうのが、いちばんもったいない。止めていい理由が、一つもないのだから。無料相談で何を聞くべきかは、こちらに。→ 探偵の無料相談で必ず聞く8つのこと
依頼先の選び方——「費用の見せ方」で誠実さは分かる
匿名の相手を突き止めたい、という切実さにつけ込む業者は、残念ながら存在します。弱っているときほど、見分ける目を持ってください。この記事の軸に沿って、「費用と期間の説明の仕方」で見抜く方法を伝えます。
危険信号①:「必ず特定できます」と言い切る。 すでに書いたとおり、開示にはログの保存期間という壁があり、海外事業者や争いによって届かないこともある。それを無視して成果を安請け合いするのは、誠実さの欠如です。
危険信号②:費用を、幅で説明しない。 「一律◯万円」と最初から言い切る、あるいは逆に金額を濁す。どちらも要注意。誠実な事務所は、「あなたのケースはこういう理由でこのくらい。ただし争われればここまで伸びる」と、幅とその根拠を示します。
危険信号③:探偵なのに「開示させます」とうたう。 法律家しかできないことを、できると言う業者。逆に、事実調査を実態不明のまま丸投げで受けようとする業者。どちらも避ける。
そして、探偵に相談するなら、探偵業の届出があるかを必ず確かめてください。営業所のある都道府県の公安委員会への届出は、法律上の義務です。届出番号を公式サイトに明示しない事務所は、それだけで候補から外して差し支えありません。→ 探偵業の届出番号とは?見方と、番号を掲げない業者を外す理由
悪質・無届の業者を見分ける、もっと具体的なサインは、こちらにまとめています。→ 悪質・無届の探偵業者を見分ける7つのサイン
よくある質問
Q. 情プラ法が施行されて、特定は安く・速くなったんですか?
軸が違う話です。2025年4月の情プラ法は、主に「削除への対応を速く・透明にする」方向の改正で、投稿者の特定(開示)そのものを直接安くする改正ではありません。特定の手続きを一本にまとめて動きやすくしたのは、それより前の2022年の改正のほう。「情プラ法で特定が安くなった」と説明する業者がいたら、正確さを少し疑ってください。
Q. 結局、総額でいくら見ておけばいいですか?
一般的な目安として、特定フェーズで30万〜100万円。ただしこれは相手が誰か分かるまでの費用で、その後の損害賠償や刑事に進めば別途かかります。幅が大きいのは、海外事業者か国内か、相手が争うか、投稿が何件かで作業量が変わるからです。あなたのケースがどのあたりに来るかは、証拠を持って無料相談に行けば、かなり具体的に見えてきます。
Q. 半年〜1年もかかるなら、その間に被害が広がりませんか?
だからこそ、「特定」と「削除」は分けて考えます。被害を今すぐ止めたいなら、まず削除の対応を急ぐ。特定は、時間はかかるけれど、責任を取らせるための本丸として並行して進める。この二本立てで考えると、「特定に1年かかるから何もできない」という手詰まりにはなりません。
Q. 心当たりがあるなら、探偵に頼めば弁護士より安く特定できますか?
期待の方向が違います。匿名投稿者の法的な特定は、弁護士と裁判所の領域で、探偵が代行することはできません。探偵が費用対効果を出すのは、「その心当たりの人物が実在するか、関与が疑えるか」を先に固める裏取りの部分。ここが固まると法的手続きの狙いが定まり、結果として全体の費用と時間を抑えやすくなる、という効き方です。
Q. 費用が心配で、まだ動けていません。何から始めればいいですか?
費用がかかるのは「やる」と決めてから。証拠の保全は無料で、今日できます。まずそこだけ固めてください。そのうえで無料相談に行き、費用感と勝ち筋を聞いてから、やるかどうかを決めればいい。順番さえ守れば、ムダなお金は一円も使いません。放置してログが消えることこそ、いちばん高くつく選択です。
Q. 一件だけの投稿でも、費用をかける価値はありますか?
一件でも権利侵害があれば検討の対象です。ただ、費用対効果で言えば、同じ相手による悪質な投稿が複数あるほうが、権利侵害の明白さや継続性を示しやすく、手続きも通りやすい。心当たりの投稿は、消される前にまとめて保全しておくと、あなたの立場が強くなります。
数字に怯えず、順番で勝つ
最後に、この記事で伝えたかったことを、一つに絞ります。
「30万〜100万」「半年〜1年」という数字は、たしかに重い。でも、その重さの正体は、幅とその理由を知らないことから来ています。海外事業者か、相手が争うか、投稿が何件か、ログが間に合うか——費用と期間を決めているのは、こうした具体的な要因です。それが見えれば、あなたのケースが幅のどこに来そうか、見当がつく。ムダに怯えることも、甘く見積もることもなくなる。
そして、その幅の中で、あなたにコントロールできる部分がある。狙いを絞る。早く証拠を固める。目的を決めておく。 これだけで、費用は下のほうに寄せられる。費用は運任せではなく、設計できる。ここが、この記事のいちばん伝えたかったことです。
今日やるべきことは、まだお金の話ではありません。気づいた投稿を、静かに保全すること。それだけ。費用がかかるのは、あなたが目的と勝ち筋を確かめて、「やる」と決めてからで間に合います。制度は、以前より、あなたの側に寄ってきている。あとは、正しい順番で動くだけです。私たちは、あなたを問い詰める側ではなく、あなたの望みを、いちばん損の少ない形で叶える側に立ちます。
※本記事は、SNS等で誹謗中傷を受けた方に向けた、費用・期間・制度に関する一般的な説明であり、個別の法的助言ではありません。記載した金額・期間はあくまで目安で、事案によって大きく異なります。発信者情報開示・削除請求・損害賠償・刑事手続きの可否や見通し、および制度の適用は、必ず弁護士に、刑事の相談は警察に確認してください。本文中の相談事例は、実在の個人・団体とは関係ありません。
まずは、話を聞かせてください
「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。