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盗聴・盗撮

頭に直接、声が聞こえる——それが機器のせいか調べてほしい、と言われて|「気のせい」と返さなかった、ある相談の記録

読了目安 約18分実務は主任調査員監修/法律部分は弁護士監修公開 2026.08.11

その人は、ドアの前で三十分、立っていた

事務所の防犯カメラに、その人が映っていたのは、約束の時間の三十分前だった。

ドアの前まで来て、ノブに手をかけて、また離す。少し歩いて、戻ってくる。それを、何度も繰り返していた。私はモニター越しにそれを見ながら、コーヒーをもう一杯淹れて、待つことにした。急かしてはいけない、とわかっていたから。ここまで来るのに、たぶん、この人は途方もない距離を歩いてきている。物理的な距離の話じゃない。

やっとチャイムが鳴って、迎え入れて、椅子を勧めた。三十代の後半くらいだろうか。きちんとした身なりで、けれど目の下の色が、ずっと眠れていない人のそれだった。座ってからも、しばらく言葉が出てこない。私は待った。

最初の一言は、こうだった。

「……たぶん、頭がおかしいと思われます。だから、途中で追い出してもらってもいいです」

私は、追い出さなかった。そのつもりも、なかった。

この記事は、そのときの相談を——本人が特定されないように細部を変えたうえで——書いている。声が聞こえる、頭のなかに直接語りかけられる、それが盗聴器やスピーカーや、なにか電波のような機器のせいではないか。そう思って、あちこちに相談したのに、どこへ行っても最後は「病院へ行ったほうがいい」で終わってしまった。誰にも信じてもらえないまま、一人で抱えている。もし、あなたがそういう場所にいるなら、この記録を読んでほしい。

「どこへ行っても、病院へ行けと言われました」

ぽつり、ぽつりと、その人は話しはじめた。

半年ほど前から、頭のなかに、声が聞こえるようになった。耳から入ってくるのとは違う。もっと内側、頭の芯のあたりに、直接、言葉が置かれる感じだという。内容は、自分を責める言葉が多い。夜、静かになると、はっきりする。誰かが、自分の考えていることを読んで、それに合わせて話しかけてくる気がする。

最初は、疲れかと思った。でも、消えない。それで、盗聴器やスピーカーが仕掛けられているんじゃないか、と考えるようになった。骨に響かせるような機械、超音波、電波——そういうもので、外から声を送り込まれているんじゃないか。そう思って、自分でも部屋を探した。天井を見た。コンセントを外した。市販の探知機も買った。何も出なかった。でも、声は止まらない。

だから、相談した。管理会社に言った。警察の相談窓口にも電話した。電気屋にも聞いた。知り合いにも打ち明けた。返ってきた言葉は、判で押したように同じだった。

「一度、病院で診てもらったら?」

その人は、そこで、少し笑った。乾いた笑い方だった。

「もう、慣れました。ああ、この人もそう言うんだな、って。話しはじめて三十秒くらいで、相手の顔が『あ、そういう人か』に変わるのが、わかるんです。だから、最近は、誰にも言わなくなりました」

私は、この「三十秒で相手の顔が変わる」という言葉を、いまでも覚えている。

あなたにも、覚えがあるかもしれない。信じてほしいだけなのに、口を開いた瞬間に、相手のなかで自分が「対応が必要な人」に分類される。あの、シャッターが下りる音。あれを何度も食らうと、人は、話すのをやめる。そして、一人になる。声そのものより、その孤立のほうが、人を追い詰めることがある。

私は、否定も肯定もしなかった

ここで、私が最初にしたことを、正直に書く。

私は、「盗聴器がありますよ」とは言わなかった。同時に、「それは気のせいですよ」とも言わなかった。

どちらも、嘘になりうるからだ。まだ何も調べていない。この段階で「ある」と言えば、それは根拠のない断定で、不安を煽って契約に持っていく手口と同じになる。「ない」と言えば、それは、この人がこれまで散々言われてきた「気のせい」を、もう一度浴びせることになる。どちらも、私はしたくなかった。

だから、私が言ったのは、こういうことだった。

「あなたが、声を聞いているのは、本当のことです。それは、疑いません。あなたが苦しいのも、本当です。そこは、動かしません。そのうえで、私にできるのは、この部屋に、あなたを苦しめている"物"が実際にあるかどうかを、道具を使って、順番に、調べることです。あるかないか、私はまだ知りません。だから、一緒に調べましょう」

その人は、しばらく黙って、それから、目のふちを赤くした。

後で聞いた話だけれど、この半年で、「あなたが声を聞いているのは本当だ」と言ってくれた人は、一人もいなかったそうだ。みんな、いきなり原因の話にいく。あるいは、いきなり否定にいく。誰も、まず「あなたがつらいのは本当だ」というところに、立ち止まってくれなかった。

私は、探偵だ。医者じゃない。あなたの頭のなかで起きていることが何なのか、それを診断する資格も、力も、私にはない。でも、部屋のなかに機械があるかどうか、電波が飛んでいるかどうか、音がどこから来ているのか——それを"物"として調べることは、できる。私にできるのは、そこだけだ。だから、そこに集中する。それが、この人に対して私が差し出せる、いちばん誠実なものだった。

盗聴を疑ったとき、多くの人が「まず自分で探し回る」。けれど、それがなぜ、かえって不安を深めるのか。そのあたりの整理は、自宅の盗聴を疑ったら、まず"探すな"にまとめてある。この人も、半年、探し続けて、消耗しきっていた。

声の出どころを、私たちは"物"として探せる

ここから、実際に何をしたのかを書く。手の内そのものは商売道具だから細かくは書けないけれど、考え方は、隠さず伝える。

まず、私が立てた見取り図は、こうだ。声を「外から送り込む機械」が本当にあるとしたら、それは、この世のどこかに、物理的に存在していないといけない。電波なら、発信源がある。音なら、鳴っている場所がある。スピーカーなら、実体がある。幽霊みたいに、どこからともなく、というわけにはいかない。物には、痕跡が残る。だから、物として探せる。

調べる相手を、私は、いくつかに分けて考えた。

電波を出して情報を送る類の機器。 盗聴器と呼ばれるものの一部は、拾った音を電波にのせて飛ばす。もし、逆に音を送り込む機械があるなら、それも何らかの信号を使っている可能性がある。こういうものは、専用の測定器で、部屋のなかの電波の様子を丁寧に見ていくと、不自然な発信がないかを確認できる。

電波を出さずに、その場で音を出す・録る類の機器。 電波を出さないタイプは、市販の探知機ではまず引っかからない。これは、機材の反応だけに頼らず、経験にもとづいて場所を系統立てて点検していく。人がよく仕込む場所、隠しやすい場所、というのが、この仕事をしていると見えてくる。そこを、一つずつ潰していく。

骨伝導や超音波のような、"直接届く"と説明される仕組み。 その人が特に恐れていたのが、これだった。頭に直接響く、というのは、骨伝導や超音波のイメージと結びつきやすい。私は、この可能性も、頭から否定しなかった。否定するのではなく、「もしそういう発生源があるなら、それも音や振動として、なんらかの形で測れるはずだ」と考えて、調べる対象に入れた。

大事なのは、私が最初から「ある」とも「ない」とも決めていない、ということだ。決めてかかると、探し方が歪む。「ある」と決めれば、無関係な反応を証拠に見立ててしまう。「ない」と決めれば、あるものを見落とす。だから、白紙で臨む。出たものを、出たとおりに扱う。それだけだ。

このあたりの、市販の探知機と専門的な調査で何がどう違うのか、という話は、盗聴器・盗撮の専門調査(TSCM)と市販探知機の違いに、別の角度から詳しく書いてある。その人が自分で買った探知機で「何も出なかった」ことが、なぜ「ない」の証明にならないのか。その理由も、そこにある。

部屋の電波を測る、という地味な作業

実際の調査は、映画みたいなものじゃない。地味だ。ものすごく、地味だ。

私は、その人の部屋に伺った。ワンルームの、片づいた部屋だった。ただ、片づきすぎていた。後で聞いたら、「どこかに機械が隠れている気がして、何度も全部出して、また戻して」を繰り返していたという。物の少ない部屋は、たいてい、そういう理由でそうなっている。

まず、部屋のなかの電波の様子を、時間をかけて確認していく。生活で使っている電化製品や、Wi-Fi、スマホ、そういうものは当然、電波を出す。それを一つずつ切り分けて、「これは冷蔵庫」「これはルーター」と潰していく。潰した先に、説明のつかない発信が残るかどうか。それを見る。派手な瞬間なんて、一つもない。ただ、機械の針や画面を見ながら、部屋のなかを、何時間もかけて、少しずつ移動する。

その人は、最初、私の後ろを、緊張した顔でついて回っていた。何か反応が出るたびに、身を固くする。私は、そのつど、声に出して説明した。「これは、そこのテレビですね」「これは、隣の部屋のWi-Fiが漏れてきてる。よくあることです」。一つ一つ、正体を言葉にしていくと、その人の肩から、少しずつ、力が抜けていくのがわかった。

これは、私がわざとやっていることでもある。調べる過程を、隠さない。何を見ているか、いま何が出て、それが何なのかを、その場で共有する。ブラックボックスにしない。なぜなら、この人がこれまで苦しんできたのは、「わからない」ことだからだ。わからないものに、囲まれている感覚。だったら、一つずつ「これはわかった」を積み上げていくこと自体が、この人にとっての救いになる。

部屋の電波を測る、というのは、そういう作業だ。魔法で「ある・なし」が一発で出るわけじゃない。地道に、正体不明を減らしていく。減らしていった先に、何が残るか。それが、答えになる。

盗聴の不安を「打ち消そう」とすると、かえって深みにはまる。事実で一つずつ確かめることでしか、あの宙ぶらりんは晴れない。その考え方は、盗聴が不安なら、打ち消そうとするなにも書いた。

音は、どこから来ているのか——生活のなかを一緒に歩く

電波の確認と並行して、私はもう一つ、別の線も調べた。「音」そのものの線だ。

頭に響く声、と本人は言う。でも、その「響き」が、本当に頭の内側だけで起きているのか、それとも、実際に部屋のどこかで、微かな音が鳴っていて、それを頭の中の声として受け取っているのか。この二つは、外から見ると同じでも、原因はまったく違う。だから、切り分ける必要があった。

私は、その人に、声が聞こえる時間帯、場所、体の向き、そういうことを、できるだけ細かく聞いた。責めるためじゃない。手がかりを探すためだ。話を聞いていくと、いくつか、気になることが出てきた。声が強くなるのは、決まって夜、静かになってから。しかも、ベッドに横になって、右側を下にしたとき。この「決まったときに強くなる」というのは、調べる側にとっては、大事な手がかりだった。

規則性があるなら、そこに、物理的な原因が隠れている可能性がある。夜に鳴る何か。特定の姿勢で近づく何か。私は、その規則性に沿って、生活の環境そのものを、一緒に点検していった。建物の設備、配管、換気、隣室との壁、外からの音。部屋というのは、思っている以上に、いろんな音を通す。エアコンの室外機、給湯器、配管を伝う振動、換気口から入る話し声。そういう「生活の音」が、静かな夜に、思いもよらない形で耳に届くことがある。

これは、盗聴とは違う話に聞こえるかもしれない。でも、私は、こういう「生活のなかの音源」を丁寧に潰すことも、調査の一部だと思っている。なぜなら、この人が知りたいのは「盗聴器があるか」の一点じゃなくて、本当は、「この声の正体は何なのか」だからだ。だったら、機械だけを探して終わりにするのは、不誠実だ。声の出どころになりうるものは、全部、テーブルの上に並べて、一つずつ見ていく。それが、筋だと思う。

隣の部屋や、近くにいる人からの音・気配が引き金になっているケースの考え方は、隣人に盗聴されている気がするにも通じる。壁一枚のことで、人の感覚は大きく揺れる。

何日もかけて、部屋を"読んだ"

正直に書くと、この調査は、一日では終わらなかった。

声が夜に強くなるなら、夜の状態を見ないと意味がない。特定の姿勢のときなら、その条件を再現しないと、つかめない。だから、時間帯を変え、条件を変え、何度かに分けて、部屋を"読む"作業を続けた。その人の生活を邪魔しないように、けれど、手を抜かずに。

その過程で、私は、その人と、たくさん話した。調査の合間、機械を見ながら、あるいは休憩しながら。声のこと。この半年のこと。誰に何を言われたか。どれだけ、しんどかったか。私は、聞いた。聞くことも、仕事のうちだと思っているから。

一度、その人が、こう言ったことがある。

「川瀬さん、もし、なんにも見つからなかったら……それって、やっぱり、私の頭がおかしいってことですよね」

私は、機械から目を離して、その人を見た。そして、こう答えた。

「見つからなかったら、それは『この部屋の、私が調べた範囲では、機械は出なかった』ってことです。それ以上でも、それ以下でもない。あなたの頭がおかしい、なんてことには、絶対になりません。それは、私が調べた結果から言えることじゃない。私は、そこまで踏み込む資格を持ってません」

その人は、また、黙った。でも、その黙り方は、最初の日とは、少し違っていた。

出なかった、と伝える夜がいちばん難しい

結論から書く。その部屋からは、盗聴器も、音を送り込む機械も、説明のつかない電波も、出なかった。

これを伝える瞬間が、この仕事で、いちばん難しい。

もし私が、良心を捨てた業者だったら、ここで嘘をつくこともできる。「怪しい反応がありました」「見えないところに、まだ何かあるかもしれません」。そう言って、追加の調査、追加の費用に持っていく。不安な人ほど、その言葉に、すがってしまう。「やっぱり、あったんだ」と。だって、そのほうが、ある意味、楽なんだ。「機械のせいだった」ほうが、自分の内側の問題だと思うより、ずっと受け止めやすい。だから、その弱みに付け込む商売が、成り立ってしまう。

私は、それだけは、しない。決めている。

ありもしない機械を「見つけました」と嘘をつくこと。出てもいない反応を、あるように匂わせること。恐怖を煽って、次の契約に引きずり込むこと。これを一度でもやったら、私は、この仕事をやる資格を失う。だから、出なかったものは、出なかった、と言う。どんなに、その言葉が、目の前の人を落胆させるとわかっていても。

でも——ここが、大事なところだ。「出なかった」を伝えることと、「気のせいだ」「病気だ」と切り捨てることは、まったく別のことだ。私は、前者は言う。後者は、言わない。

その夜、私は、その人にこう伝えた。

「私が調べた範囲では、機械は出ませんでした。これは、事実です。ごまかしません。……でも、これで『あなたの苦しみは嘘だった』ということには、ならない。あなたが声を聞いているのは、今日も、本当のことです。私が調べたのは、あくまで『この部屋に、外から声を送る機械があるか』の一点だけ。それが出なかった。それだけです。あなたの苦しみの正体が何なのかを、私は、まだ何も言えていない」

嘘で"見つけました"と言うことは、絶対にしない

ここで、少し、業界の話をさせてほしい。あなたを守るための話だ。

この「声が聞こえる」「監視されている」というつらさを抱えた人を、食い物にする連中が、残念ながら、いる。「電磁波を防ぐグッズ」「特殊な調査」「あなたに仕掛けられた機械を除去します」——不安な人に、次から次へと、お金を払わせる。相手が真剣に苦しんでいることを知っていて、その苦しみを、財布に変える。私は、こういうのが、心の底から、嫌いだ。

だから、あなたに、見分ける物差しを渡しておく。

「絶対にあります」「必ず見つけます」と、調べる前から言う相手は、疑ってください。 まっとうな調査は、調べる前に結論を持たない。あるかないかは、調べてからしかわからない。それを飛ばして断言する相手は、あなたを不安にさせて動かそうとしている。

料金の出し方を、先に、はっきり説明しない相手も、外していい。 何にいくらかかるのか。範囲を広げたら、どう変わるのか。それを事前に示せないところは、後から費用を膨らませる余地を残している。調査の費用がどういう理屈で決まるのかは、盗聴・盗撮の調査費用の相場を先に読んでおくと、相手の説明が誠実かどうかを、自分で判断できる。

「見つからなかったのは、もっと巧妙に隠されているからだ」と、際限なく調査を続けさせる相手には、気をつけて。 不安の底が抜けている人に対して、この言い方は、いくらでも効いてしまう。私は、出なかったら、出なかったと言って、そこで一度、手を止める。止められることも、まっとうさの一部だ。

嘘で「見つけました」と言えば、その一言で、目の前の人は、たぶん少し安心する。でも、それは、砂の上の安心だ。存在しない敵と、これからずっと戦わせることになる。私は、それを、この人にさせたくなかった。だから、つらくても、事実を言った。

調べ終えても、私はあなたを置いていかない

さて。「機械は出ませんでした」と伝えた、あの夜。私が、その次に何を言ったか。ここが、この記録で、いちばん伝えたいところだ。

私は、こう言った。

「機械は出なかった。でも、私は、ここで『はい、終わり』とは言いません。あなたは、まだ、声に苦しんでる。それは、今日も変わってない。だったら、私にできることは、まだ残ってる。この先、あなたが、どう楽になれるか。それを、私と、一緒に考えさせてください」

調べて、物証が出なかった。ここで多くの相手が、あなたを置いて、いなくなる。「うちで調べたけど、何もなかったんで」と。それが、いちばん、こたえる。また一人に戻される。私は、それをしたくなかった。

私は、探偵で、医者じゃない。だから、あなたの内側で起きていることを、診断も、治療も、できない。それは、正直に認める。でも、「置いていかない」ことは、できる。話を聞き続けることは、できる。もう一度、別の角度から環境を見直すことも、できる。声が強くなる条件を、もっと細かく一緒に洗い出して、生活のなかで避けられる引き金がないか探すことも、できる。あなたが、次に、どこに、どう頼るのがいいか——それを、突き放すためじゃなく、あなたが一人にならないために、一緒に整理することも、できる。

盗聴・盗撮の悩みを、どこに相談すればいいのか。警察と、探偵と、それぞれ何ができて何ができないのか。その全体像は、盗聴・盗撮は警察に相談すれば動く?にまとめてある。あなたが次の一歩を選ぶとき、選択肢が見えているほうがいい。選ぶのは、あなただ。でも、選択肢を並べて、隣に座ることは、私にできる。

その人とは、あの調査のあとも、何度か、話している。声が消えたわけじゃない。でも、「一人じゃなくなった」とだけ、言ってくれた。それで、いいと思っている。私の仕事は、声を消すことじゃない。この人が、また誰かに三十秒でシャッターを下ろされて、一人に戻される——それを、少しでも減らすことだ。

この仕事で、私が守っている一線

長くなった。最後に、私が、この種の相談で守っている一線を、はっきり書いておく。あなたが、これから誰かに相談するとき、相手がこの線を守っているかを、見てほしいから。

私は、あなたが声を聞いていること、苦しんでいることを、疑わない。まず、それを本物として受け止める。そのうえで、私にできる「機械や電波や音の出どころを、道具で調べる」ことを、白紙の状態から、順番に、隠さずやる。調べる過程を、あなたと共有する。何が出て、それが何なのかを、その場で言葉にする。

そして、絶対にしないことが、ある。ありもしない機械を「見つけました」と嘘をつかない。でっち上げない。恐怖を煽って契約に引きずり込まない。出なかったものは、出なかったと言う。けれど、出なかったからといって、「気のせいだ」「病気だ」と、あなたを切り捨てもしない。調べ終わっても、あなたを、そこに一人で置いていかない。

これが、私の一線だ。派手なことは、何も言えない。あなたの声を、一発で消してみせます、なんてことも、言えない。私は、そんな力を持っていない。持っていると言う相手のほうを、疑ってほしい。

私にできるのは、あなたの苦しみを、まず「本当だ」と認めるところから始めて、調べられるものを、誠実に調べて、そして、そのあとも、あなたの隣にいることだ。それだけだ。でも、その「それだけ」を、これまで誰もしてくれなかったのだとしたら——だったら、一度、その扉を、開けてみてほしい。三十分、ノブの前で迷ってもいい。私は、追い出さない。待っている。


*この記事は、相談員が実際に受けた相談をもとに、本人が特定されないよう細部を再構成した読み物です。登場する人物・状況は、実在の特定の個人とは関係ありません。また、機器調査に関する一般的な考え方を述べたものであり、個別の医学的判断や法的助言に代わるものではありません。*

まずは、話を聞かせてください

「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。

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