従業員の勤務実態調査|”直行直帰”の申告を鵜呑みにした人件費は、静かに漏れ続ける
「本当に、働いているのだろうか」——確かめる術がなくて、もやもやしていませんか
日報には、きちんと訪問件数が並んでいる。
けれど、売上や反応は、いつまでたっても振るわない。
直行直帰の日は、朝から夕方まで、どこで何をしているのか、まるで見えない。
移動の途中に立ち寄ったという場所が、どうにも腑に落ちない。残業や外出の申告が、実態と合っている気がしない。
一つひとつは、思い過ごしかもしれない。忙しくて成果が出ないだけかもしれない。そう自分に言い聞かせてきたはずです。
けれど、外回りや直行直帰という働き方は、その性質上、上司の目が届かない時間が長い。だからこそ、「本当にちゃんと働いているのか」という疑問が芽生えると、それを晴らす手立てが、社内にはほとんどありません。日報は本人が書くもの。位置情報は勝手に取れば違法。問い詰めれば関係がこじれる——。確かめようがないまま、もやもやだけが積み重なっていく。
そして、いちばん厄介なのは——この疑問を、扱い方を間違えると、かえって自分(会社)の側が責任を問われるということです。位置を無断で追った。行動を過剰に監視した。そうした「行き過ぎ」は、たとえ相手に非があっても、今度は会社側の落ち度になりかねません。
この記事では、外回り・直行直帰の社員の勤務実態について、次のことを順番に、実務の視点で整理します。
- なぜ「合法な方法で、客観的な事実を押さえる」のが唯一の正解なのか(先に結論)
- そもそも勤務実態の「ズレ」には、どんな型があるのか
- 社内で「やってはいけないこと」——GPSの無断設置と、行き過ぎた監視
- 探偵・専門調査の行動確認でできること
- 事実を確かめたあと——労務対応へどう進めるか
- 依頼先を選ぶときのチェックリスト
派手な話はありません。勤務実態の確認は、感情ではなく手順の問題です。落ち着いて読み進めてください。
この記事を読むとよい人/読まなくてよい人
先に、この記事が役に立つ方かどうかをはっきりさせておきます。
読むとよい人
- 外回り・直行直帰の社員が、申告どおりに稼働しているか確信が持てない経営者
- 日報や勤怠の申告と、実際の成果や動きに、食い違いを感じている方
- 「確かめたいが、やり方を間違えて会社が責任を負うのは避けたい」と考えている方
- 疑いを、噂や感情ではなく、客観的な事実として押さえたい方
読まなくてよい人
- 特定の社員を辞めさせたい、罰したいという結論が先にあり、その口実を探している方——調査は「事実を確かめる」ためのもので、誰かを陥れる道具ではありません
- 社員を四六時中、監視下に置きたい方——後述のとおり、それ自体が会社側の責任問題になります
- まだ具体的な引っかかりが何もなく、漠然とした不安だけの方——その段階なら、まずは勤怠管理の仕組みを整えるほうが先です
あなたが前者に当てはまるなら、この先が役に立つはずです。
先に結論:疑いは「合法な行動確認で、客観的な事実」にしてから動く
先に、この記事の結論をお伝えします。
外回り・直行直帰の社員の勤務実態を確かめるとき、いちばん大切なのは——
位置情報の無断取得や過剰な監視には手を出さず、合法的な行動確認で「客観的な事実」を押さえてから、労務の対応に動くということです。順番と手段を守るだけで、結果がまるで変わります。
大切なポイントは3つです。
- 確かめたいのは「印象」ではなく「行動の事実」。 「たぶんサボっている」という感覚では、注意も処分もできません。「何時に、どこで、どう過ごしていたか」という客観的な記録があってはじめて、次の一手が打てます。
- 手段を誤ると、会社が責任を負う。 社用車や私物への無断GPS設置、必要な範囲を超えた監視——こうした行き過ぎた調べ方は、相手のプライバシーを侵害し、実施した会社側の責任問題になります。事実さえ分かればいい、では済みません。
- 社内では、社外での行動は確認しきれない。 直行直帰・外回りの時間の動きは、そもそも社内の目が届きません。ここは、合法的な行動確認という手段が力を発揮する領域です。
「サボっているなら、すぐ問い詰めて白黒つけたい」。その気持ちは自然です。けれど、そこをこらえて、静かに事実を固める。これが、後戻りせず、しかも会社を守るための第一歩です。
ここから、ひとつずつ見ていきます。
1. まず知っておく——勤務実態の「ズレ」の型
ひとくちに「働いていないのでは」と言っても、中身はさまざまです。自社で起きている(かもしれない)ことが、どの型に近いのかを知っておくと、確かめるべき事実も見えてきます。代表的なものを挙げます。
直行直帰の時間の空費
朝、自宅から直接「訪問先」へ向かうことになっているが、実際には長時間、業務と無関係に過ごしている——という型です。
- 申告された訪問件数と、実際の稼働がかみ合わない
- 移動時間として届けられている時間が、不自然に長い
- 「外回り」の実態が、上司も同僚も誰も把握していない
一件あたりのズレは小さくても、外回り中心の働き方では、日常的に、長時間にわたって積み重なりやすいのが特徴です。
虚偽の申告
日報・勤怠・経費の記録が、実際の行動と食い違っている型です。
- 訪問していない先を、訪問したと日報に書く
- 残業・出張・直帰の時間を、実態より水増しして申告する
- 交通費や外出先を、事実と違う内容で報告する
書類の上ではつじつまが合っているため、机上のチェックだけでは見抜きにくいのが難しいところです。
勤務時間中の私的行動・副業
会社の時間に、業務以外のことをしている型です。
- 勤務時間中に、私用の外出や長時間の休憩を繰り返す
- 会社に隠れて、副業や競業にあたる行動をしている
- 「客先」と称して、実際は別の目的で動いている
これらの型に共通するのは、確かめたいのが「誰が・いつ・どこで・どういう行動を取っていたか」という具体的な事実だという点です。噂や印象ではなく、行動の記録。そこに、この後の話のすべてがかかってきます。
2. 社内で「やってはいけないこと」——ここで会社が責任を負う
疑いを持った経営者が、良かれと思って、あるいは我慢できずに、やってしまいがちなことがあります。そのほとんどが、事態を悪化させるか、会社自身の責任問題になります。 ここは、はっきりお伝えします。
社用車や私物に、無断でGPSを取り付ける
「位置さえ分かれば早い」と、社用車や本人の持ち物に、断りなくGPS機器を仕込む——これは、絶対に避けてください。
2021年のストーカー規制法の改正で、承諾のない位置情報の取得や、GPS機器の無断での取り付けが、規制の対象になりました。相手の同意なく位置を継続的に把握する行為は、違法と判断されるおそれがあります。たとえ社用車であっても、本人の私的な行動まで無断で追えば、プライバシー侵害の問題は避けられません。
「相手が悪いことをしているのだから、これくらい」という理屈は通りません。違法な手段で得た情報は、いざというとき証拠として使えないばかりか、実施した会社側が法的責任を問われる——これが現実です。
本人のスマホ・SNS・私用アカウントを無断で覗く
行き先を突き止めようと、本人の私用スマホや、個人のSNS、メッセージのやり取りを無断で見る——これも危険です。通信の秘密やプライバシーの侵害にあたるおそれがあり、私用端末への不正アクセスは、法に触れる可能性があります。
必要な範囲を超えて、監視する
従業員にも、プライバシーがあります。たとえ勤務時間中であっても、正当な目的と必要な範囲を超えた監視は、それ自体が問題になります。四六時中つきまとう、私生活の領域まで踏み込む——そうした過剰な監視は、行き過ぎれば会社側の責任を生み、社員との信頼も、職場の空気も壊します。
大切なのは、「事実さえ分かればいい」ではなく、「どう調べたか」まで問われるということです。ここが、勤務実態の確認でいちばん見落とされやすく、そして会社にとって致命傷になりうる落とし穴です。
確証のないまま、本人を問い詰める
「はっきりさせたい」と、証拠がそろわないうちに本人を呼んで問い詰めるのも、多い失敗です。相手は「そんな事実はない」と否認して以降は警戒し、日報の書き方を取り繕い、逆に「疑われた」「不当に扱われた」と主張してくることもあります。一度警戒された相手の実態を、あとから押さえ直すのは、何倍も難しくなります。
3. 探偵・専門調査の行動確認でできること
では、社内で手を出せない部分を、どう埋めるのか。ここで第三者による専門調査、とくに合法的な範囲での行動確認が選択肢になります。できることの「輪郭」を、実務の視点でお伝えします。手の内の詳細には踏み込みませんが、何が期待できるかは知っておいてください。
社外での行動を、客観的な事実として記録する
行動確認の一番の価値は、社内では届かない「社外に出てからの行動」を、利害から切り離された立場で、客観的な記録として残せることにあります。
- 直行直帰・外回りと称する時間に、実際はどこで、どう動いているか
- 申告された訪問先に、実際に行っているか
- 勤務時間中に、副業や競業、私的な行動にあたる動きをしていないか
「何時に、どこで、どう過ごしていたか」を時系列で押さえた記録は、あなたの「そう思う」という主張を、事実で語れるものに変えます。しかも、これはあくまで公道など、正当に確認できる範囲での行動の観察であり、無断でのGPS設置や不正アクセスといった違法な手段とは、まったく別のものです。合法だからこそ、その記録が後で役に立ちます。
社内の情報と、外の事実を突き合わせる
社内にある日報・勤怠・経費の記録と、外で確認できた事実を突き合わせることで、疑いに輪郭を与えていきます。申告された内容と、実際の行動に食い違いがないか。「疑い」を「確かめられた事実」に近づけていくのが、専門調査の役割です。
なお、正直にお伝えしておくべきことが2つあります。ひとつは、調査は成果を保証するものではないということ。相手の行動や状況によっては、はっきりした事実を押さえられないこともあります。「必ずサボりの証拠が取れる」と断言する相手は、かえって疑ってください。もうひとつは、信頼できる調査者は、違法な手段は使わないということ。無断でのGPS取り付け、他人のアカウントへの不正アクセス、盗聴——こうした手段は使いませんし、それらで得た情報は結局、証拠として使えません。「合法的に、正当な目的で、必要な範囲だけ」を守るからこそ、その記録が意味を持ちます。
4. 事実を確かめたあと——労務の対応へ進む
客観的な事実が押さえられたら、次は「どう対応するか」です。ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
探偵・調査でできるのは、「事実を客観的に確かめる」ところまでです。そこから先の、注意・指導・懲戒といった労務の判断や、法的な手続きは、会社と、必要に応じて弁護士など専門家の役割です。ここを混同しないことが、うまく進めるコツです。
事実を手にしたうえで選べる道は、たとえば次のようなものです。
まずは、話を聞かせてください
「まだ、依頼するかどうかもわからない」——その段階で構いません。
決めてから相談するものではなく、決められないから相談していい場所です。